EUDR家具要件には、小規模な工場ほど踏み抜きやすい落とし穴があります。多くの対象産品で零細・小規模企業に認められている6か月の追加猶予が、木材には適用されないのです。EU向けに木製家具を製造しているなら、御社の期日は2026年12月30日。規模が100倍の事業者とまったく同じ日です。
コストがかさむのは、実はそこではありません。本当に負担が大きいのは、貨物がEUの通関を通る前にバイヤーがデューデリジェンス声明(DDS)を提出しなければならず、その記載項目のほぼすべてが御社から出るデータだという点です。木材の生産国、伐採地の区画の座標、そして1台あたりに含まれる木材の正味重量。3つ目については、記録すら取っていない家具工場が大半です。
以下では、この四半期に輸出営業が実際に受けている質問を、ウェビナーの説明ではなく規則の条文に即して整理します。
EUDRは家具に適用されるのか
適用されます。木製家具は担当者の判断ではなく、HSコードによって対象範囲に入ります。規則 (EU) 2023/1115 は附属書Iに対象産品を列挙しており、家具の項目は明示されています。
| 附属書Iの項目 | 対象となるもの |
|---|---|
| ex 9401 | 腰掛け(第9402項のものを除く)。ベッドに転換できるかどうかを問わない。およびその部分品で、木製のもの |
| 9403 30、9403 40、9403 50、9403 60、9403 91 | 木製家具(事務所用、台所用、寝室用、その他)およびその部分品 |
| 9406 10 | 木製のプレハブ建築物 |
| 4414–4421 | 木製の額縁、木箱・パレット、たる、工具の柄、建築用木工品、木製食器、寄木細工、その他の木製品 |
この表から2つのことが導かれますが、その2つこそ現場で取り違えられ続けています。
「ex」という接頭辞は飾りではありません。 ex 9401 は、第9401項のうち一部だけが対象になるという意味です。つまり木製の腰掛けと木製の部分品です。9401に分類される総張りのスチールフレーム製オフィスチェアは自動的に対象になるわけではなく、ブナ材フレームのダイニングチェアは対象になります。これを決めるのは製品写真ではなく、通関業者が付けたコードです。
御社のパレットはおそらく対象外ですが、パレットを売る事業は対象です。 第4415項(木箱、木枠、パレット、パレットカラー)は附属書Iに入っていますが、本規則は、市場に出される別の製品を支持・保護・運搬するための梱包材として専ら使用される産品には適用されません。ワードローブの下に敷くパレットは対象外、製品として販売するパレットは対象です。これを ISPM 15の表示要件 と同じ話だと考えている相手には、一言添えておく価値があります。熱処理が証明するのは木材に害虫がいないことであって、その木材が森林破壊を伴わないかどうかについては何も語りません。ルールは2つ、書類も2組、木箱は1つです。
EUDR家具要件は実際にはいつ始まるのか
木材のサプライチェーンにいる事実上すべての事業者にとって、2026年12月30日です。2025年12月に公布された規則 (EU) 2025/2650 が適用日を1年後ろにずらしました。規則の採択以来、これで2度目の延期です。
| 対象 | 適用日 |
|---|---|
| 大規模・中規模事業者、および川下事業者 | 2026年12月30日 |
| 零細・小規模企業——すでにEU木材規則の対象だった産品(すなわち木材) | 2026年12月30日 |
| 零細・小規模企業——EUDRのその他すべての対象産品 | 2027年6月30日 |
延期はすでに2回起きていますが、3回目を前提に予算を組むのは筋の悪い賭けです。サプライヤーからのデータ収集に残り4か月というリードタイムは、余裕どころではありません。3社も4社も製材工場から板材を仕入れている工場にとっては、ほぼ下限です。
木製家具の中小企業が猶予期間を失う理由
木材がもともと規制対象だったからです。欧州委員会自身のガイダンスは、零細・小規模事業者の適用日を、旧EU木材規則(EUTR)の対象だった産品については2026年12月30日、それ以外については2027年6月30日と定めています。EUDRはEUTRを廃止するため、木材セクターは「新たに規制される分野」ではなく「すでに予告済みの分野」として扱われます。
製品が木製である限り、規模が小さいことはスケジュール上まったく有利に働きません。10人の工房と、年間1万本のコンテナを出荷する事業者が、同じ1つの期日を共有します。
実務上の帰結はこうです。コーヒーやカカオの輸入者向けに書かれたEUDRの解説を読んで、自社を頭のなかで「2027年6月」に分類していたなら、そこから動かしてください。従業員数が何人であろうと、EUDR家具要件は2026年12月末に効き始めます。
声明を提出するのは誰か——自社か、バイヤーか
ほぼ常にバイヤーです。EUDRにおける事業者とは、産品をEU市場に出す当事者を指します。通常の輸出取引では、それはEUの輸入者であって、ベトナムやポーランドや広東の工場ではありません。輸入者はEUの情報システムにデューデリジェンス声明を電子的に提出し、第4条第3項により、すべての声明を5年間保存する義務を負います。
とはいえ、御社が免れるわけではありません。第9条第1項は、事業者が提出前に収集しなければならない情報を定めており、その収集先はただ1か所——自社のサプライヤーです。そのサプライヤーが御社です。
| DDSの入力項目 | 情報の出どころ | 工場がつまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 産品の記述とHSコード | コマーシャルインボイス | インボイスとスペックシートでコードがずれている |
| 生産国 | 木材の仕入記録 | 生産国とは木が育った国であり、家具を組み立てた国ではない |
| 区画のジオロケーション | 林業側のサプライヤーから順に伝達 | 川上で誰も尋ねられたことがない |
| 数量——キログラム単位の正味重量 | まだどこにもない | 工場が記録しているのは総重量と材積であって、木材の正味重量ではない |
| 伐採の合法性に関する情報 | 伐採許可、林地の使用契約 | 製材工場が持っており、家具工場にはない |
意外に思われるのは「生産国」の行です。米国産ホワイトオークでオークのダイニングテーブルを作る東莞の工場が申告するのは、中国ではなく米国です。1つのSKUに3か国由来の樹種が混ざっているなら、3つとも記載します。
ジオロケーションが実際に意味するもの
EUDRにおけるジオロケーションとは、当該産品が生産された土地の区画の緯度・経度であり、少なくとも小数点以下6桁で表します。 この精度はおよそ10センチメートルです。地名ではなく、測量座標を求められていると考えてください。
- 4ヘクタール以下の区画:緯度・経度の点1つで足ります。
- 4ヘクタールを超える区画:点ではなく、外周を示すポリゴンが必要です。
家具工場にとって、ここから導かれる正直な結論は1つです。この項目は自社では埋められません。木を伐った当事者から始まり、製材工場、パネル材や突板のサプライヤーを経て、御社まで下りてくる必要があります。依頼は今すぐ始めてください。2026年12月になっても答えられないサプライヤーは、結局は入れ替えることになるサプライヤーだからです。しかも板材の仕入先を替えれば、色合わせも塗装の挙動も、輸出家具の木材含水率の傾向も変わります。それがシーズンの真ん中で起こります。
最初に破綻する項目は正味重量です
第9条第1項(b)は、単位について曖昧さを残していません。EU市場に搬入され、または搬出される産品について、数量は「正味重量のキログラムで表示し、該当する場合には理事会規則 (EEC) No 2658/87 の附属書Iに定める補助単位を併記する」とされています。それ以外の場合、数量は正味重量、または該当する場合には容積もしくは個数で表示できます。
この規定と自社の輸出書類を突き合わせてみてください。一般的な家具の梱包明細書には、カートンごとの総重量、カートンごとの正味重量、そして材積が並んでいます。そのどれも、対象産品の木材正味重量と確実に一致する数字ではありません。カートンの中には金具、ガラス、ウレタンフォーム、付属部品、そしてカートン自体も入っているからです。
実務で回るSKU単位の記録は、こういう形です。出荷ごとではなく、機種ごとに1回作ります。
| 項目 | 記入例 | 出どころ |
|---|---|---|
| SKU/機種 | WR-2400-OAK | 製品マスタ |
| 部材 | 側板/引き出し前板/背板 | BOM |
| 樹種(学名) | Quercus alba | 木材の仕入記録 |
| 生産国 | 米国 | 木材の仕入記録 |
| 1台あたりの木材正味重量 | kg、小数第2位まで | 部材を実際に計量する。推計しない |
| 1台あたりの非木材重量 | kg(金具、ガラス、ウレタン、梱包材) | BOM |
| HSコード | 9403 50 | 通関業者 |
実物のはかりで一度計り、その数字を製品マスタに入れてください。密度表から推計した数値は、当局が申告された正味重量と船荷証券上の総重量を突き合わせた瞬間に崩れます。
バイヤーが求めてくるもの
届くのはアンケートではなく、データパックの提出依頼だと考えてください。いま実際に受信箱に入ってきているのは、次のような内容です。
- 木材を含む部材ごとの樹種と学名
- 樹種ごとの生産国
- 区画のジオロケーション——4ha以下は点、それを超える場合はポリゴン
- 生産の日付または期間
- 1台あたりの木材正味重量(kg)と、請求時に使うHSコード
- 生産国の法令に照らして伐採が合法だったことを示す証拠
- 加工流通過程(CoC)書類を添付したサプライヤー宣誓書
- 追加質問に48時間以内で回答できる担当者名
このデータパックを1週間で返せるサプライヤーは、1か月かかるサプライヤーからリピート発注を奪います。しかもそれは価格に関係なく起こります。デジタル製品パスポートの導入スケジュールへの備えでも同じ力学が働きました。データが揃っているサプライヤーが発注を取り、他社はまだ製材工場にメールを書いている段階だった、という構図です。
早見表
ここまでの内容を、「EUDR家具要件にどう対応していますか」とバイヤーからメールが来たときに営業責任者が必要とする7つの答えに圧縮しました。
| 質問 | 短い答え |
|---|---|
| 木製家具は対象か | 対象——ex 9401、9403 30/40/50/60/91、9406 10、および 4414–4421 |
| 木材輸出者としての期日は | 2026年12月30日。企業規模を問わない |
| DDSを提出するのは誰か | 産品をEU市場に出す事業者——通常は輸入者 |
| 数量の単位は | 正味重量のキログラム。該当する場合は補助単位を併記 |
| 座標の精度は | 小数点以下6桁以上。4ヘクタール超はポリゴン |
| 輸出用パレットは対象か | 専ら梱包材として使う場合は対象外。製品として販売する場合は対象 |
| 声明の保存期間は | 提出から5年間 |
よくある質問
EU域外で製造された家具にもEUDRは適用されますか
EU市場に入る時点で適用されます。この規則が問うのは工場の所在地ではなく、産品がどこで生産されたか、そしてEU市場に出されるかどうかです。ベトナムや中国の工場自体にEUDRの提出義務はありませんが、工場のデータがなければEUのバイヤーは提出を完了できません。結果として、同じだけの強制力を持つ商取引上の義務になります。
小規模企業のEUDR期日はいつですか
多くの対象産品では2027年6月30日ですが、すでにEU木材規則の対象だった産品——木材および木製家具を含みます——は2026年12月30日です。木材関連の事業者は2026年12月30日を自社の期日として扱い、広く出回っている2027年という数字は無視してください。
EUDRはEU木材規則に取って代わるのですか
廃止します。EUDRはEUTRと並存するのではなく引き継ぐ形になっており、まさにそれが、木材セクターの中小企業に、新たに対象となった産品のような長い助走期間が与えられない理由です。
バイヤーが申告の根拠にするスペックシートには、どの製品データを載せるべきですか
樹種、生産国、木材の正味重量、そしてHSコードです。しかも寸法がすでに載っているのと同じシートに載せてください。バイヤーのコンプライアンス担当が開くのは、そのシートだからです。多くの輸出者がこの段階で、自社のスペック資料が写真と手打ちの表と誰も更新できないPDFの寄せ集めだったことに気づきます。機能する形は、実測値から組み立てた1枚の製品データカードです。寸法は目分量で打ち込むのではなく製品の実際のエッジに合わせ、重量ははかりの読みを取り、規制対応の項目をその隣に並べる。そのうえで、バイヤーのポータルやカタログが求めるサイズで書き出します。実測したジオメトリを製品画像に固定できるソフトウェアなら、これは数分で終わります。一方、写真の横にもっともらしい数字を生成するAI画像ツールは、本物とまったく同じ顔をした数値を返してきて、当局が船荷証券と突き合わせた瞬間に破綻します。どのみちスペックシートを作り直すなら、数値の置き場所として適切なのは家具のスペック図面です。バイヤー側の生産管理担当もコンプライアンス担当も、すでに読んでいる唯一の書類だからです。
サプライチェーンをどこまで遡る必要がありますか
区画までです。製材工場までではなく、商社まででもなく、その木が立っていた土地の座標までです。それがジオロケーション項目の存在理由そのものであり、データ収集を数週間前ではなく数か月前に始めなければならない理由でもあります。
