工業製品の寸法図が掲載ページで役に立つかどうかは、記載されている数値が正確かどうかで決まります。「約」でも「だいたい」でもなく、公差を踏まえたうえで買い手がそのまま判断に使える数値である必要があります。家具を購入する人は、ソファのサイズが1センチ違っていても許容することがあります。しかし工業製品の買い手はそうはいきません。取り付け金具の穴ピッチが3mmずれているだけで、見た目がおかしいという話では済まず、実際にボルトが通らず、発注が工場に届く前に取り消されてしまいます。この記事では、その寸法図をどう作るか、どの項目を記載すべきか、公差やインターフェース寸法のうちどれが受注を左右するのか、寸法図の表記ミスが起こりやすい落とし穴、そして寸法図と正式な工業図面の境界線がどこにあるのかを整理します。
工業製品の寸法図に記載すべき項目
工業製品の寸法図とは、技術図面とは異なり、製品写真の上または横に正確な寸法・公差・インターフェース寸法を直接記載した1枚の画像で、買い手が発注前にサイズと適合性を確認できるようにするものです。キャプション付きの商品写真とは違い、買い手が「良さそうだ」から「これなら発注できる」まで最短で進むための手段です。
下の表は最低限記載すべき項目です。どれか1つでも省略すると、買い手はメールで問い合わせる理由を持つことになります。
| 項目 | 買い手のどんな疑問に答えるか | 例 |
|---|---|---|
| 全体寸法(長さ×幅×高さ) | 設置スペース・ラインや輸送用クレートに収まるか | 610×405×220mm(24.0×15.9×8.7インチ) |
| インターフェース/取り付け寸法 | 既存の設備に取り付けられるか | 4穴パターン、PCD 100mm |
| 穴ピッチ | 締結部品の位置が合うか | 中心間距離50mm、±0.3mm |
| 一般公差等級 | 実物がこの数値からどの程度ずれる可能性があるか | ISO 2768-m(中級) |
| 材質と厚み | 荷重に耐えられるか、環境に適しているか | 3mm冷間圧延鋼板 |
| 重量 | 人手で運べるか、輸送コストはどの程度か | 4.2kg |
| 認証/規格 | コンプライアンス要件を満たしているか | IP65、CE |
これらを記載したからといって、CADデータになるわけではありません。寸法図はあくまで買い手向けのものです。答えるべきは「自社の用途に合うか」であり、「どう加工するか」ではありません。図面と製品写真の違いは実務上とても重要です。ASME Y14.5のような製図規格に基づいて作成される正式な工業図面には、データム基準や幾何公差記号、製造に必要な詳細情報が含まれます。一方、寸法図には購買判断に必要な情報だけを記載します。この2つを混同すると、双方にとって無駄が生じます。適合性を確認したいだけの買い手は読めないGD&T記号の中に埋もれてしまい、数値が3つしか書かれていない販促用写真を渡された加工担当者は、結局あなたに正式な図面を問い合わせることになります。
カテゴリー別の記載要件
寸法図に含まれる項目は、それぞれ異なる買い手の疑問に答えるためのものです。「とりあえず数値を足す」という一括作業ではなく、カテゴリーごとに独立した作業として扱う必要があります。
公差表記
製品写真における公差表記とは、公称寸法だけでなく、その横に許容範囲を併記することを指します。公差が書かれていない数値は、買い手にとって推測するしかない数値になります。工業製品の買い手は家具を購入する人と違い、情報がなければ最悪のケースを想定します。写真上にGD&Tの全記号を再現する必要はありません。ISO 2768-1に基づく一般公差等級を1回記載したうえで、特に厳しい管理が必要な1〜2箇所の寸法だけを個別に示します。
| 呼び寸法の範囲 | f(精級) | m(中級) | c(粗級) | v(極粗級) |
|---|---|---|---|---|
| 0.5〜3mm | ±0.05 | ±0.10 | ±0.20 | — |
| 3〜6mm | ±0.05 | ±0.10 | ±0.30 | ±0.50 |
| 6〜30mm | ±0.10 | ±0.20 | ±0.50 | ±1.00 |
| 30〜120mm | ±0.15 | ±0.30 | ±0.80 | ±1.50 |
| 120〜400mm | ±0.20 | ±0.50 | ±1.20 | ±2.50 |
中級(m)は一般的なCNC加工や板金加工の大半をカバーするため、等級を特に指定していない場合の初期値として最も無難です。精級(f)は軸受穴や勘合面に、粗級・極粗級はブラケットやカバーなど、勘合しない部位で1mm程度のずれが問題にならない箇所に適しています。
インターフェース寸法
インターフェース寸法とは、買い手がすでに保有している設備に部品を接続できるかどうかを決める寸法のことです。ボルトパターン、シャフト径、ネジ規格、ポート寸法などが該当します。工業部品の寸法表記が本当に力を発揮するのはこの部分です。全体寸法はスペースに収まることしか示しませんが、インターフェース寸法は既存設備に実際に取り付けられるかどうかを示します。この項目を省略すると、簡単な質問には答えていても、受注を左右する肝心な質問には答えないままになってしまいます。
穴ピッチとボルトパターン
穴ピッチは通常、PCD(ピッチ円直径、pitch circle diameter)、つまり各ボルト穴の中心を通る仮想円の直径と、穴の数を組み合わせて「4×100」(4穴、PCD100mm)のように表記します。円形以外の穴配置の場合は、弧の長さではなく中心間の直線距離をそのまま記載し、その穴ピッチの公差は全体寸法の公差とは別に表記してください。顧客の既存設備との間で穴位置が0.5mmずれるだけで、丸め誤差では済まされず、返品につながります。
材質の厚み
厚みの表記は、板状・シート状・プレート状の部品で特に重要です。この数値が耐荷重性、耐食性の余裕、そして買い手側の技術者がすでに定めている仕様を満たすかどうかを左右します。「3mmの鋼板」と「3mmのアルミ板」は強度の観点でまったく同じではないため、材質と厚みは必ずセットで表記し、厚みだけを単独で示すことは避けてください。
買い手がサイズを判断できなくなる表記ミス
写真だけでサイズが判断できない場合、買い手は問い合わせをします。その一往復が、受注ではなく1日分の遅延として自分の受信箱に残ることになります。よくある抜け漏れは次のとおりです。
| よくあるミス | 買い手が混乱する理由 | 対処法 |
|---|---|---|
| 全体の長さ×幅×高さしか記載していない | スペースに収まることは確認できても、接続できるかは分からない | 穴ピッチ、穴径、ネジ規格、ポート寸法など、インターフェース寸法を最低1つ追加する |
| 公差が記載されていない | 買い手は最悪のケースを想定するか、公差が存在しないと思い込む | 一般公差等級、または特に重要な±値を記載する |
| 単位が1種類しかない | 別の単位系を使う買い手を取りこぼす | すべての寸法をメートル法とヤード・ポンド法の両方で併記する |
| 数値がリンク先のPDFにしかない | 買い手は画像をざっと見るだけで、添付資料の細かい文字は見落とされる | 主要な寸法は添付資料だけでなく写真に直接記載する |
| 切りのいい数値に丸めている | 実物と一致せず、検品の段階で発覚する | 実測値をそのまま記載する(50mmではなく49.7mmであっても) |
社内にCAD環境がないチームでも、すぐに使える方法があります。寸法・スペック表記専用のツールを使えば、写真上の実際のピクセル測定値にそのまま数値を固定できるため、写真に表示される数値がそのまま実物の数値になります。別途図面を起こす手間も、スクリーンショットに定規を当てて目測する手間もかかりません。
ここでの精度を怠ったときのコストは、スペックシートがB2B受注を左右する理由で説明している内容と同じ構造です。写真からサイズを確認できない買い手は、あなたを断るのではなく、すでに答えを写真に載せている別のサプライヤーへ移るだけです。サイズ表記の不足による同様のミスマッチは、工業部品に限った話ではありません。家具のサイズ表記に関する事例では、掲載ページに外箱サイズしか記載されていない場合に返品がどう増えるかを紹介しています。また、製品写真に家具の寸法を記載する方法は、同じ課題への消費者向けの解決策です。曖昧な寸法表記が、輸送費・検品・手直しを含めて実際にいくらのコストになっているかを知りたい場合は、返品コスト計算ツールで推測ではなく実際の数値に換算できます。
アップロード前の寸法図チェックリスト
工業製品の掲載画像は、買い手や問い合わせへの返信として送る前に、必ず次の項目を確認してください。
- 全体の長さ×幅×高さをメートル法とヤード・ポンド法の両方で記載している
- インターフェース寸法または取り付け寸法(穴ピッチ、穴径、ネジ規格、ポート寸法)を最低1つ記載している
- 一般公差等級、または特に重要な±値を記載している
- 材質と厚みをセットで記載している(別々にしていない)
- 輸送・搬入・設置に影響する場合は重量を記載している
- 買い手のコンプライアンス要件に関係する場合は認証・規格を記載している
- すべての数値が実際の仕様書や見積書と一致している(見た目のための丸めがない)
- 画像が寸法図であることを明示し、正式な工業図面と誤認されないようにしている
よくある質問
工業図面と製品写真の違いは何ですか?
工業図面(または工業仕様書)は、ASME Y14.5のような製図規格に基づいて作成される、製造にそのまま使える文書で、データム基準と完全な幾何公差表記を含みます。寸法図付きの製品写真は買い手向けのもので、部品が自社の用途に適合するかどうかだけに答えればよく、加工担当者がそこから部品を製造できるようなものと誤認されるべきではありません。
工業製品の写真に寸法をどう追加すればよいですか?
実測値に基づいて、寸法線とラベル付きの数値を写真上に直接重ねます。目測で手描きした矢印は使いません。まず全体寸法を記載し、次に買い手側の設備に関わるインターフェース寸法を記載し、最後に公差等級を記載して、写真上の数値から実物がどの程度ずれる可能性があるかを買い手に伝えます。
製品写真に公差表記を入れる際、見た目を煩雑にしないコツはありますか?
GD&Tの記号をすべて並べる必要はありません。部品全体に対して一般公差等級を1回だけ記載します。ISO 2768-mであれば一般的な加工や板金加工の大半をカバーできます。そのうえで、特に厳しい管理が必要な1〜2箇所の寸法だけを個別に示します。それ以外はすべてその等級が適用されると考えれば、写真は見やすいままです。
買い手が必要とするのは穴ピッチやボルトパターンの寸法ですか、それとも全体寸法だけで十分ですか?
どちらも必要ですが、取り付けやボルト締結、既存設備への接続を伴う部品では、穴ピッチが受注を左右することがほとんどです。全体寸法はスペースに収まることしか確認できず、実際に取り付けられるかどうかについては何も示しません。
寸法図はCAD図面と同じものですか?
いいえ、違います。寸法図は、買い手のサイズと機能に関する疑問に数秒で答えるためのラベル付き写真です。CAD図面は、製造ラインが部品を作るために必要な公差の詳細を含む製造文書です。買い手が求めているのが簡単な適合確認だけの場合に、CAD図面を送ってしまうと、数値の記載がない普通の写真を送るのと同じくらい商談を遅らせてしまいます。
出典・参考資料
ASME — ASME Y14.5に基づくGD&T基礎コース
Engineers Edge — ISO 2768一般公差の参照表
Wikipedia — ボルトサークル(ピッチ円直径)
Alibaba.com — 商品情報の記載ルール
Thomasnet — 効果的な見積依頼(RFI)を作成するためのヒント
