第一角法と第三角法の違いを5秒で見分ける

第一角法と第三角法の違いは、どの図が用紙のどちら側に来るかを決めます。5秒の判別手順、ISO の規定、そして輸出案件が実際に壊れる場所。

第一角法と第三角法の違いを5秒で見分ける

第一角法と第三角法の違いは、製図スタイルの好みではありません。すべての図が用紙のどちら側に置かれるかを決めるもので、投影法を取り違えて読んだ図面からは、寸法はどれも正しいのに一つの形状だけが反転した部品ができあがります。本来は右端から 40 mm のはずの穴が、左端から 40 mm の位置に開く、というかたちです。図面の段階では誰も気づきません。組立の段階では全員が気づきます。

違いは一文で言えます。第三角法では、各図は見た側に置かれます。第一角法では、その反対側に置かれます。以下はすべて、この一文を当てはめただけの話です。

第一角法と第三角法の違いを表1枚で

ISO 5456-2 は六つの基本の図を文字で指定します。A が正面図、B が上から見た図、C が左から、D が右から、E が下から、F が後ろからの図です。そのうえで、投影法によって配置が変わります。

第一角法(旧称「E 法」) 第三角法(旧称「A 法」)
図 B、上から 正面図のに置く 正面図のに置く
図 E、下から に置く に置く
図 C、左から に置く に置く
図 D、右から に置く に置く
図 F、後ろから 都合に応じて右または左 都合に応じて左または右
対象物の位置 観察者と投影面の間 投影面の後ろ。投影面は透明として扱う
定める規格 ISO 5456-2:1996 箇条 5.1 ASME Y14.3-2012 (R2018)
その上に立つ図示規約 ISO 128-3:2022(ISO 128-30:2001 を置き換え) ASME Y14.3
主に使われる地域 欧州、中国、インド、アジアの大部分 米国、カナダ——そして慣習として日本
記号 二面で表した円錐台 第一角法の記号の鏡像

第二角法と第四角法も幾何的には成り立ちますが、誰も使いません。だから実務で議論になる配置は二つだけで、その二つは同じ用紙の反対側に平面図を置きます。

図が入れ替わる理由:ガラス箱

対象物の主要な面と平行になるようにガラス箱へ入れ、各面を外側のガラスへ投影し、その箱を平らに開きます。仕組みはこの展開がすべてです。

第三角法では、投影面は目と対象物の間にあります。ガラス越しに奥の対象物を見ているので、像は手前のガラスに落ち、開くと自分が立っていた側に来ます。右から見れば、右側面図は右に来ます。

第一角法では、対象物が目と投影面の間にあります。像は奥のガラスへ押し出され、開くと反対側へ回り込みます。右から見れば、右側面図は左に来ます。

隣り合う図が必ず一つの寸法を共有するのも、同じ理由です。幅は正面図と平面図をまたぎ、高さは正面図と側面図をまたぎます。共有しているはずの寸法が揃わないなら、その図面は二つの流儀を継ぎ合わせて作られています。

記号がなくても効く5秒の判別手順

まず記号のことは忘れて、平面図を探します。

  1. 平面図を見つける——真上から見たときの輪郭が描かれている図です。
  2. それは正面図の上ですか、下ですか。 上なら第三角法、下なら第一角法です。判別はこれで終わりで、条文そのままです。上から見た図は、第三角法では上に、第一角法では下に置かれます。
  3. 用紙に図が二つしかありませんか。 それなら表題欄を読みます。投影法の記号は表題欄の上か横にあり、"FIRST ANGLE" や "THIRD ANGLE" と文字で明記した図面も多くあります。文字のほうが記号より頼りになります。記号は 40 % に縮小して引き直した時点でつぶれますが、文字は残るからです。
  4. 図が文字と矢印つきでばらばらに置かれていませんか。 それは三つ目の正当な配置で(後述します)、この場合は位置から何も分かりません。

この手順は、切削のあとではなく見積もりの前に回してください。対称な部品なら投影法が違っても結果は同じで、読み違えたことに気づく機会すらありません。非対称な部品では、これが出荷とスクラップの分かれ目になります。

記号そのものと、それでも読み違える理由

ISO 5456-2 は各方法に識別用の図記号——二面で表した円錐台——を定め、その比率も規定しています。二つの記号が互いに鏡像なのには、はっきりした理由があります。記号は、配置の規則を円錐台に当てはめただけのものだからです。円錐台の端面図は、第三角法では見た側に、第一角法では反対側に来ます。箇条 5.1 と 5.2 が他のあらゆる図に求めているのと、まったく同じ扱いです。

だからこそ「円が左にあれば……」と丸暗記するのは、いちばん悪いやり方です。時間に追われると頭の中で鏡像が裏返りますし、印刷サイズではどちらも「円錐台の隣に円がいくつか」にしか見えません。前節の平面図による判別も同じ五秒ですが、向きを覚えている必要がありません。

記号が肩代わりしてくれないことが三つあります。

  • 顧客のスケッチに記号があるとは限りません。 規格は記号を定めますが、買い手の購買担当がメールで送ってくる PDF に記号を入れる義務はどこにもありません。
  • コピーを重ねると生き残りません。 拡大縮小、再出力、FAX と再スキャンを経れば、6 mm の記号はただの黒い染みになります。
  • 単位も既定公差もねじ規格も語りません。 投影法については一点の曖昧さもないのに、実際にお金がかかる部分はすべて曖昧、という図面はあり得ます。

誰も使わない三つ目の選択肢:矢示法

ISO 5456-2 の箇条 5.3 は、輸出側の担当者がまず教わらない配置を認めています。第一角法・第三角法の厳密な配置が不都合なとき、**矢示法(参照矢印による方法)**は図を自由に置くことを許します。主投影図に小文字で見る方向を示し、対応する大文字を各図の左上に添えます。大文字は常に、図面の正規の向きから読めるように書きます。

この箇条は、この方法に図記号はないと明記しています。混乱の原因は、まさにそこです。図に文字が振られていて投影法の記号が見当たらない図面は、不備のある図面ではなく、規格が認めた別の配置です。そこで存在しない記号を探すと、半日が消えます。

箇条 5.4 は、覚えておく価値のある四つ目のケースを扱います。鏡像正投影です。建築や内装の一部で使われ、水平面と平行に置いた鏡に映った像として図が描かれます。図面全体が一貫して反転して読め、ほかに説明がつかないときに疑うべきは、これです。

輸出案件が実際に壊れる場所

第一角法と第三角法が図面審査で問題になることは、ほとんどありません。審査の場では全員が寸法を見ているからです。壊れるのは二歩あとで、次の五つの場面です。

症状 何が起きたか 止められるチェック
寸法は完璧なのに部品が反転している 投影法を取り違えて読んだ 平面図は上か下か。見積もり前に確定する
一つの図面束の中で二枚が食い違う 買い手の米国式図面と、自社の ISO テンプレートの詳細図 1 枚目だけでなく、すべての図面で投影法の注記を確認する
表題欄は ISO、形状は第三角法 導入時から CAD テンプレートの既定値を変えていない 記号と実際の配置を突き合わせる——形状が優先
図に文字が振られ、記号が見つからない 箇条 5.3 の矢示法による配置 文字を読む。記号探しはやめる
買い手の顧客が図面から寸法を読み取れない 設計図面を販売用素材に転用した 掲載用に寸法入りの画像を別途つくる

いちばん代償が大きく、いちばん話題にならないのが最後の行です。

販売用の図に必要なもの、不要なもの

設計図面は、加工者が部品を再現できるようにするためのものです。販売用の図は、買い手が四秒ほどで、それが自分のスペース、パレット、ラックに収まるかを判断できるようにするためのものです。別の文書であり、壊れ方も違います。この違いは寸法図・スペック図・CAD の違いスペックシートと技術図面の違いで通して読む価値があります。

実務的な基準を一つ。カタログ画像が投影法の記号なしでは理解できないなら、それはカタログに向かない画像です。六面の正投影図、隠れ線、表題欄は、質問への回答ではなく質問の呼び水です。売れるのは、実物の写真に実測値が固定されたもの——全幅、奥行き、高さ、そして買い手が実際に尋ねてくる二つか三つのクリアランスです。

これは CAD とは別の仕事で、道具も違います。写真に寸法を固定する種類のツールは、画像そのものを測ることで動きます。寸法線を製品の実際の稜線にスナップさせ、形状関係は推測ではなく計算で求め、注記済みのファイルは各モールのスペック画像サイズで書き出します。対照として理解しておく価値があるのが AI 画像生成です。実寸 54 cm の製品に「60 cm」と書いた美しい矢印を、なんの抵抗もなく描いてくれます。もっともらしい数値は、測った数値ではありません。仕上がりのレイアウトはこの寸法入り製品画像の例で、金物や建具まわりへの同じ考え方の適用は工業スペック図のページで確認できます。

見積もり前チェックリスト

  • 平面図は正面図の上か下か——答えを見積書に書き込む
  • 図面束のすべての図面で、投影法の記号か注記を見つけた
  • 記号と実際の図の配置が一致している——一致しないなら切削前に確認する
  • 単位(mm か inch)が明記され、その投影法が主に使われる地域と矛盾しない
  • 矢印つきで文字が振られた図を、誤りではなく箇条 5.3 の配置として認識した
  • 非対称な形状——穴、切り欠き、ケーブル引き出し口、蝶番の向き——を第二の図で確認した
  • 図面全体が一貫して反転して読めるなら、鏡像表現の可能性を潰した
  • 設計図面の切り抜きではなく、掲載用の寸法入り販売画像を別途用意した

よくある質問

図面が第一角法か第三角法かは、どう見分けますか。

平面図を探します。正面図の上にあれば第三角法、下にあれば第一角法です。ISO 5456-2 はそのまま書いています。上から見た図は、第一角法では下に、第三角法では上に置かれます。表題欄近くの投影法の記号は予備の確認手段で、"FIRST ANGLE" や "THIRD ANGLE" と明記された注記は、そのどちらよりも確実です。

第一角法は間違いですか。

いいえ。どちらも正規の方法です。ISO 128-30:2001 を置き換えた ISO 128-3:2022 が図示の規約を担い、ISO 5456-2 が両方の方法を詳細に規定しています。米国の実務は ASME Y14.3 が扱い、そこでの実務規約は第三角法です。どちらも格下ではありません。唯一の誤りは、どちらを使ったかを書かないことです。

第一角法を使っている国はどこですか。

実務的な大づかみとして、欧州とアジアの大部分が第一角法、米国とカナダが第三角法です。日本は例外です。第一角法の地域にありながら、慣習として第三角法を採ります(現場で単に「三角法」と言えば、第三角法のことです)。ただし、これは法律ではなく現場の傾向として扱ってください。図面を縛るのは国籍ではなく表題欄で、米国資本の CAD テンプレートを使う欧州の買い手からは、一日中第三角法の図面が届きます。

販売用の図に投影法の記号は必要ですか。

不要ですし、むしろ入れないほうがよいでしょう。投影法の記号は、複数の図の読み方を製造側に伝えるものです。商品ページを見ている買い手は、複数の図を読んではいません。販売用素材には、写真一枚、実測した外形寸法、そして購入可否を決める一つか二つのクリアランスを載せれば十分です。

出典・参考資料

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