全かぶせ・半かぶせは仕上げのオプションのように聞こえますが、実際には加工の指示です。しかもこの二語は、買い手が大西洋のどちら側で覚えたかによって別の幾何を指します。「24 インチのキャビネットに全かぶせ扉を」と二社の工場に送れば、幅が 9.5 mm 違う扉が二枚返ってくることがあります。どちらも間違ってはいませんが、片方は使えません。
その差を生む計算を先に置きます。問題のすべてがこの一行に入っているからです。24 インチのフェイスフレーム(面付け枠)キャビネットで縦框が 1-1/2 インチなら、開口は 21 インチです。米国の慣習では全かぶせは片側 1-1/4 インチのかぶせ量なので、扉幅は 21 + 2 × 1.25 = 23-1/2 インチになります。24 インチのフレームレス(欧州式)キャビネットには枠がないため、全かぶせ扉は側板の木口を端から端まで覆い、標準の 1/8 インチの目地だけを残します。つまり 23-7/8 インチです。同じ一言、同じキャビネット幅で、3/8 インチ——9.5 mm——の差が出ます。
全かぶせ・半かぶせ・インセット:二つの語彙の違い
「かぶせ量(overlay)」はフェイスフレーム側の言葉で、扉が枠をどれだけ覆うかを表します。 かぶせ量ゼロなら、扉は開口をちょうど埋め、枠は一切隠れません。
「目地(reveal)」はフレームレス側の言葉で、キャビネットの木口がどれだけ見えたまま残るかを表します。 目地ゼロなら、扉は箱体の外面と面一になります。
同じ取り合いを正反対の端から記述しているので、両者が混ざった注文書は電話で確認しない限り作れません。
| フェイスフレーム(北米) | フレームレス(欧州式 / 32 mm) | |
|---|---|---|
| 使う語 | かぶせ量(overlay) | 目地(reveal) |
| 測る起点 | 開口の縁から外側へ | 箱体の外面から内側へ |
| 基準となる部材 | 枠の縦框、一般に 1-1/2 in(38 mm) | 側板、一般に 16 または 18 mm |
| 標準値 | かぶせ量 1/2 in と 1-1/4 in、5/8 in と 1-3/8 in も流通 | 扉と扉の間 1/8 in(3 mm)の目地 |
| 「全(フル)」の意味 | 目地は残しつつ大きくかぶせる | 扉が側板の木口を覆う |
| 扉寸法の式 | 扉 = 開口 + 2 × かぶせ量 | 扉 = 箱体前面 − 目地代 |
同じメールの中で取り違えられやすい語がもう二つあります。
- 半かぶせは「全かぶせの半分」ではありません。 これは二枚の扉が一枚の中仕切りを共有するときの丁番と扉の配置で、それぞれが中仕切りのおよそ半分を覆います——16 mm のフレームレス中仕切りなら片側 8 mm ずつです。同じ箱体の中で、外側の端は全かぶせ、中央の共有仕切り部分は半かぶせということが普通にあります。
- インセットはかぶせではありません。 扉が開口の内側に納まります。Showplace Cabinetry はインセット扉の四周に 3/32 インチのクリアランスを指定しています。1-1/2 インチの枠は全幅が見えたままです。
ケース A:買い手のキャビネットがフレームレスの場合
欧州の大半、オーストラリアの大半、そしてそれ以外の地域でもフラットパックや輸入キッチンの多くがこれに当たります。
加工前に確認すること。
- 板厚——16 mm と 18 mm はどちらも一般的で、これが並び全体の扉幅を変えます。
- 扉と扉の間の目地——3 mm が既定値です。引き締まった見た目のために 2 mm で通すプログラムもあります。
- 並びの端が壁で終わるのか、フィラーなのか、エンドパネルなのか。外側の目地がこれで変わります。
600 mm の箱体に 3 mm の目地で一枚の全かぶせ扉なら、扉幅は 600 − 3 = 597 mm です。同じ箱体に観音開きなら、(600 − 3 の中央目地 − 0) ÷ 2 = 各 298.5 mm となります。
ここでの落とし穴は、「全かぶせ」と言いながら「目地ゼロ」を意味している買い手です。目地ゼロの扉は開閉時に当たります。ガラス扉やミラー扉は余裕が少なくではなく多く必要で、Blum の技術カタログは破損リスクを理由にガラス・ミラー前板の四周に最低 2 mm の隙間を推奨しています。
ケース B:買い手のキャビネットがフェイスフレームの場合
北米の住宅市場がこれで、手直しが最も多く発生します。「フル」という語が業界内でも本当に一致していないからです。
プロのキャビネットメーカーによる WoodWeb の長期にわたる議論が示す結論はこうです。「全かぶせ」はもともとフレームレスの用語であり、フェイスフレームの工房は自社ルールで当てはめている。ある工房は 1-1/2 インチの縦框に 1-1/4 インチのかぶせ量、残る目地は 1/4 インチという意味で使います。別の工房は扉間の隙間が 1/4 インチになれば何でもよいという意味で使います。どちらも間違いではなく、単に別々の社内ルールであり、そしてどちらもあなたの社内ルールではありません。
ですから聞くべきは形容詞ではありません。次の三つの数字を聞いてください。
| 確認する項目 | よくある答え | 理由 |
|---|---|---|
| 縦框・横框の幅 | 1-1/2 in(38 mm) | かぶせ量の原資はすべてここから出る |
| 片側あたりのかぶせ量 | 1/2 in、5/8 in、1-1/4 in、1-3/8 in | 扉寸法を直接決める |
| 隣り合う扉の間の隙間 | 1/4 in または 1/2 in | かぶせ量が左右対称かどうかが分かる |
21 インチの開口に片側 1/2 インチのかぶせ量で一枚扉なら、扉幅は 21 + 1 = 22 インチです。同じキャビネットでかぶせ量を 1-1/4 インチに変えると 23-1/2 インチになります。仕様書の一項目で 1-1/2 インチも振れるということです。
ケース C:インセット扉
インセットはかぶせ量の曖昧さを取り除く代わりに、容赦のない公差を持ち込みます。扉は開口の内側に、四周とも均等な隙間で納まらなければなりません。3/32 インチ(約 2.4 mm)が一般的な目標値で、1/8 インチ(3 mm)が意図的に見える最大値です。
工場側で変わること。
- 開口の直角度が扉寸法と同じくらい重要になります。開口が 2 mm 傾いていると、くさび形の隙間として現れます。
- 木材の伸縮をかぶせ量が吸収してくれなくなります。多湿の仕向地向けの無垢インセット扉には季節変動の余裕が必要で、それを買い手と書面で合意しておく必要があります。
- 丁番は設定違いではなく、別の品番になります。
湿度変動の大きい市場向けにインセットを注文するなら、その前提は含水率と並べて注文請書に書くべきです。輸出家具の木材含水率と同じ扱いです。
ケース D:一つの開口に扉二枚
中央の隙間は注文書で最も抜け落ちる数字であり、しかもキャビネットの真ん中を目線の高さで縦に走るため、客が最初に見る数字でもあります。
観音開きの場合、各扉 = (開口 + 2 × かぶせ量 − 中央の隙間)÷ 2 です。
1-1/2 インチの縦框を持つ 30 インチのフェイスフレームキャビネット(開口 27 インチ)で、かぶせ量 1/2 インチ、中央の隙間 1/8 インチとすると、各扉 = (27 + 1 − 0.125) ÷ 2 = 13-15/16 インチです。計算から中央の隙間を落とすと両方の扉が 1/16 インチずつ広くなり、干渉し、荷が着いてからロット全体を手鉋で削ることになります。
丁番はその数字と一致していなければなりません
かぶせ量は扉の寸法だけの話ではありません。カップ、カップの端からの距離、アームのクランク、座金の高さという一式で決まります。隠し丁番はほぼすべて 35 mm カップを使うので、「35 mm 丁番」だけでは仕様として役に立ちません。全かぶせも半かぶせもインセットも同じカップを共有しているからです。
公開されている一例として Blum の CLIP top では、座金の高さが 0、3、6、9 mm で展開され、公表されている関係式は KT = FA + 3.5 mm + MD(FA が前板のかぶせ量、MD が座金の高さ)です。注文にとっての意味はこうです。0 mm の座金を 3 mm の座金に替えると、扉には一切手を加えずにかぶせ量が 3 mm 動きます。丁番を買い手が支給し、扉をあなたが作るなら、梱包明細に座金の高さが書かれていない限り、どちらかが 3 mm ずれます。
判断早見表
| 買い手が書いてきた語 | 前提にしないこと | これを聞く | それから加工 |
|---|---|---|---|
| 「全かぶせ」 | 扉がすべてを覆うということ | 枠付きかフレームレスか。縦框の幅は。片側のかぶせ量は | フェイスフレーム:開口 + 2 × かぶせ量。フレームレス:箱体 − 目地 |
| 「半かぶせ」 | 全かぶせの半分という意味 | 共有する中仕切りはあるか。厚みは | 扉ごとに仕切りの 1/2、そこから隙間を引く |
| 「標準のかぶせ量」 | 何も | 御社のプログラムで標準はどの数字か | 数字が届いてから |
| 「1/2 インチのかぶせ量」 | 枠が 1-1/2 in であること | 縦框の幅と扉間の隙間 | 開口 + 1 in、目地と突き合わせて検算 |
| 「インセット」 | かぶせ用の丁番で足りること | クリアランスの目標値と直角度の公差 | 開口 − 2 × クリアランス、四周とも |
| 「ヨーロピアンスタイル」 | 自動的にフレームレスであること | フレームレスの箱体か、欧州式丁番を使う枠付きか | 見積もり前に確認 |
次にやること
手直しをどれだけ減らせるかの順に、この差を恒久的に埋める方法が三つあります。
- かぶせ量の取り決めを図面の注記ではなく注文請書に書くこと。 「フェイスフレーム、縦框 1-1/2 in、片側かぶせ量 1-1/4 in、目地 1/4 in、中央の隙間 1/8 in」という一行があれば、誰が読んでも扉幅の計算を同じように再現できます。
- 寸法の一覧だけでなく、注記入りのかぶせ断面図を製品と一緒に出すこと。 ここでの買い手の混乱は空間的なもので、数字の表では解消しません。終わらせられるのは、枠幅・かぶせ量・目地がそれぞれ実際の幾何に対して記入された断面図です。数字が、それが説明している実際の稜線に固定され、買い手のプラットフォームやカタログが求めるサイズで書き出されている状態です。これは写真の加工ではなく計測の仕事であり、画像生成とはまるで別物です。生成器は一度も測っていないキャビネットに、それらしい「1-1/4 in」を書き込みます。3 mm の誤差がコンテナ 1 本の受取拒否になる取り合いでは、それらしい数字は数字がないことより悪いのです。これらの扉が載る箱体の参考寸法は標準的なキッチンキャビネット寸法のページに、商品ページでの実例の前後比較は吊り戸棚の寸法表示ケーススタディにあります。
- 丁番の仕様を扉の仕様と一緒に送ること。 カップ径、穴あけ距離、アームのクランク種別、座金の高さ。この四つが合意されていなければ、あなたが切ったかぶせ量はただの提案です。
卸の買い手は小売の買い手よりこれらの数字を早く、しかも決まった順番で聞いてきます——卸の買い手が聞いてくる標準キャビネット寸法で示した順番と同じです。それに対応する内寸はワードローブの内寸で扱っています。
よくある質問
全かぶせと半かぶせの違いは何ですか。
全かぶせは、一枚の扉が使える範囲の箱体木口または枠の幅を全部覆うことを指します。半かぶせは、二枚の扉が一枚の仕切りまたは縦框を共有し、それぞれがおよそ半分を覆うことを指します。半かぶせは「共有していること」で定義されるのであって、全かぶせの半分の寸法という意味ではありません。
全かぶせはフェイスフレームとフレームレスで同じですか。
いいえ。フレームレスでは全かぶせ扉が箱体の木口を覆い、残るのは約 3 mm の目地だけです。北米のフェイスフレームでは「全かぶせ」は慣習的に 1-1/2 インチの縦框に 1-1/4 インチのかぶせ量を意味し、1/4 インチの目地が残ります。同じ言葉が、同じキャビネット幅で別の扉幅を生みます。
かぶせ量からキャビネット扉の寸法はどう計算しますか。
フェイスフレームの開口に一枚扉なら、扉 = 開口 + 2 × かぶせ量。観音開きなら、扉 = (開口 + 2 × かぶせ量 − 中央の隙間) ÷ 2。インセットなら、扉 = 開口 − 2 × クリアランスで、片側 3/32 インチが一般的です。フレームレスの全かぶせなら、扉 = 箱体前面の幅 − 目地代です。
キャビネット扉の標準的な目地はどれくらいですか。
フレームレスでは扉間 1/8 インチ(約 3 mm)が一般的な既定値で、より引き締めたプログラムでは 2 mm を使います。1-1/4 インチのかぶせ量と 1-1/2 インチの縦框のフェイスフレームでは、目地は片側 1/4 インチです。
隠し丁番はすべて 35 mm カップですか。
欧州式の隠し丁番はほぼすべてそうで、全かぶせ・半かぶせ・インセットのいずれの型でも同じです。カップが共通であるため、「35 mm 丁番」からかぶせ量は分かりません。かぶせ量はアームのクランクと座金の高さから決まるので、その二つは別途指定する必要があります。
出典・参考資料
- CabinetSense Wiki — Reveals:overlay はフェイスフレームの用語、reveal はフレームレスの用語
- WoodWeb ナレッジベース — フェイスフレームにおける「全かぶせ」の定義(プロ間の見解の相違、縦框の幅、隙間)
- Showplace Cabinetry — overlay の意味:フル、パーシャル、フレームレス、インセット(インセットのクリアランス 3/32 in)
- Blum カタログおよび技術マニュアル — CLIP top の座金高さ展開、かぶせ量の関係式、ガラス扉の隙間推奨値
- Eagle Woodworking — 枠付きとフレームレスのキャビネット:扉取り付けの要件
