RaとRzの違い:同じ数値でも、表面はまったくの別物です

RaとRzの違いは、測っているものが違う点にあります。Raが同じ2つの部品でも、シールできるのは片方だけです。各パラメータが何を見ているのか、なぜ換算係数が使えないのか、ISO 21920で何が変わったのかを整理します。

RaとRzの違い:同じ数値でも、表面はまったくの別物です

RaとRzの違いは、精度を取るか手軽さを取るかという話ではありません。この2つのパラメータは見ているものがそもそも違い、一方では合格した表面が、もう一方では致命的に外れることがあります。同じRaを持つ2つの部品が別々の機械から出てきて、シールできるのは片方だけ、ということが実際に起こります。図面に「Ra 1.6」とだけ書いてあるなら、それは表面を指定したのではなく、平均値を指定しただけです。

これは技術の話にとどまらず、商売の話でもあります。切削品や鋳造品が受入検査ではねられる理由の上位に表面粗さがあり、争点はほぼ必ず「どのパラメータを、どう測り、どれだけの長さで測ったか」です。

RaとRzの違い:それぞれが実際に測っているもの

Raは、評価長さにわたって輪郭曲線が平均線からずれた量の絶対値を平均した値、すなわち算術平均粗さです。 これは平均です。山も谷もその面積に比例して寄与するため、それ以外は滑らかな表面に深い傷が1本あっても、数値はほとんど動きません。

Rzは山谷系のパラメータで、連続する5つの基準長さそれぞれで測った最大の山谷高さを平均した値、すなわち最大高さ粗さです。 こちらは極値に支配されます。基準長さの中に深い傷が1本入れば、Rzは即座に変わります。

両者が何を見ているかというこの差が、話のすべてです。

Ra Rz
種類 ずれ量の平均 5つの最大山谷高さの平均
敏感なもの 全体の肌 孤立した山と谷
見えないもの 単発の深い傷、孤立した突起 極値の間にある細かい肌
主な用途 一般的な肌の管理、加工の安定性 シール面、疲労が効く面、塗膜の密着
偶発的な工具痕への反応 ほとんどしない 即座に反応する

同じRa、まったく違う2つの部品

2本の軸で測った輪郭曲線を思い浮かべてください。どちらも図面指示はRa 1.3 µmです。

1本目は均一に研削された面です。肌がそろっていてほぼ周期的、山と谷の大きさも似ています。Rzは4 µm前後に収まり、RzとRaの比は3に近くなります。

2本目は、長さの大半では1本目より滑らかですが、仕上げ加工中に切りくずを引きずったせいで、深さ12 µmほどの孤立した傷が数本入っています。評価長さ全体で平均すると、この数本の谷の寄与はわずかで、Raは依然として1.3 µm程度を示します。一方Rzは12 µm前後、比はおよそ10です。

どちらの部品も「Ra 1.3 µm max」という図面指示は通ります。しかしOリングを掛けてみると、シールできるのは1本目だけです。2本目の傷はシールラインを真横に横切っていて、流体に通り道を与えてしまいます。シール面、油圧部品、疲労が効く面をRa単独ではなくRzで、あるいは両方で指定するのはこのためです。これは公差の積み上げとまったく同じ種類の問題で、部品はすべて単体では公差内なのに、組み上げると成立しません。

換算係数が存在しない理由

Rz ≈ 4 × Ra、ときにはRz ≈ 7 × Raという目安を目にすることがあります。どちらも特定の加工法についての観察であって換算ではなく、しかも2本目の軸が壊しているのはまさにこの前提です。

比は、その面がどう作られたかで決まります。

表面の性格 代表的なRz / Ra比
均一・周期的(精密研削、ホーニング) 3–5
送りマークが規則的な旋削・フライス面 4–7
孤立した欠陥、むしれ、介在物のある面 8–15+

換算表は、Raが捨ててしまった情報を取り戻せません。 客先図面がRzを指示しているならRzを測ってください。自社のRa測定値から換算して報告するのは、試験成績書が裏づけられない主張であり、この種のことは生産中ではなく、サプライヤー監査の場で表に出ます。

誰も指定しないカットオフ

仕様の議論を2週間のメールのやり取りに変えてしまうのがこの点です。同じ物理的な面でも、測定に使うフィルタのカットオフ値によってRaの値は変わります。

測定した輪郭曲線には、粗さ(短波長)とうねり(長波長)の両方が含まれています。これを分けるのがフィルタ、すなわち輪郭曲線のカットオフ値λcです。カットオフを長く取るほど、うねりの多くが粗さとして数えられ、Raは大きくなります。標準の基準長さの規則はλcを想定する粗さ範囲と結びつけており、中間域ではλc 0.8 mmが一般的な既定値ですが、この「一般的な既定値」という言葉はかなり重い仕事をしています。

したがって、完結した指示には最低限これだけ必要です。

  1. パラメータ — Ra、Rz、または両方。それぞれに個別の限界値を付ける
  2. 限界値とその意味 — 最大値か、最大/最小の組み合わせか
  3. カットオフ値λcと評価長さ。その範囲の既定値でない場合は必ず明記する
  4. 筋目方向 — 面の支配的な模様の向き。粗さは筋目に直交する方向で測るため、筋目に沿って測るとはるかに低い値が出る
  5. 適用する面 — 部品全体ではなく、その特定の面

どれか1つでも欠ければ、誠実な2つの試験所が同じ部品を測って、2倍違う結果で対立し得ます。

2021年に変わったこと

2021年12月、輪郭曲線方式の表面性状について、ISO 21920シリーズがISO 4287、ISO 4288、ISO 1302およびISO 13565の一部を正式に置き換えました。図面テンプレートが仕上げ記号のところでいまだにISO 1302を引用しているなら、それは廃止された文書を引用しています。

実務上の帰結は2つです。

  • Raは現在、評価長さ全体で一度に計算されます。一方Rzは相変わらず5つの基準長さ区間の平均です。旧定義では計算の順序が異なっていたため、過去の部品を測り直すと、部品側は何も変わっていないのにRaがわずかに違って出ることがあります。形状偏差を含む輪郭では、その差は必ずしも小さくありません。
  • 図示方法が変わりました。 旧記号は既存図面に残っており読み取れますが、新規図面はISO 21920-1に従うべきです。

もう1つ、並行して整理しておくべき体系があります。北米の図面はしばしばASME B46.1を参照し、そこには独自のパラメータ体系があって、Rzの求め方は歴史的にISOと異なっていました。古いドイツ図面の「Rz DIN」も、ISOのRzと同一ではありません。図面にRzとだけ書かれ、どの規格によるものか書かれていない場合は、見積もりを出す前に確認してください。これは製品の寸法公差全般に当てはまるのと同じルールです。

通る仕上げ指示の書き方

受入検査を生き延びる表面性状の指定は、こう書かれています。

シール面A:Rz 6.3 µm max、Ra 1.6 µm max、λc 0.8 mm、筋目は軸線に直交、ISO 21920-1による。

一般注記の中に浮いている「Ra 1.6」と比べれば、どちらなら客先の品質保証部門が電話をかけずに受け入れられるかは明らかです。

表面性状指示のチェックリスト

  • 数値だけでなく、パラメータ(Ra、Rz、または両方)を明示している
  • 規格と版を記載している(ISO 21920-1、またはASME B46.1)
  • その範囲の既定値でない場合、カットオフ値λcを記載している
  • 筋目方向を正しい記号で示している
  • 指示を部品全体に既定適用せず、特定の面に結び付けている
  • 面ごとに要求が異なる場合、それぞれ分けて示している
  • 部品形状で測定方向が曖昧になる場合、方向を取り決めている
  • 旧図面がN等級(N1–N12)を使っている場合、µmに換算している

この「特定の面に結び付ける」ところで、多くの仕様書が崩れます。部品全体に掛かる一般注記は、すべての面を過剰指定してコストを押し上げるか、重要な面を曖昧なまま残してリスクを押し上げるかのどちらかです。解決は幾何的なものです。仕上げ指示は、図面上の実際の面を指す引出線に付き、その面を位置決めしている寸法と並んでいるべきで、そのためには図面が装飾的なイラストではなく、実測された本物の形状を持っている必要があります。寸法を実際のエッジにスナップさせ、指示をそれが支配するフィーチャーの上に置けるソフトウェアなら、品質担当がそのまま動ける成果物になります。描き直した画像や生成した画像では、部品の絵の横に数字が浮いているだけのものにしかなりません。同じ原則は粉体塗装と防食の要求を指定するときにも当てはまり、使えるスペックシートとカタログを分けるのもここです。

よくある質問

RaとRzの違いは何ですか?

Raは輪郭曲線の平均線からのずれを算術平均した値で、全体の肌を表し、孤立した欠陥にはほとんど影響されません。Rzは評価長さ内の最大山谷高さ5つを平均した値で、最も深い谷と最も高い山に支配されます。Raが同じ2つの面でもRzは大きく異なることがあり、漏れるのはRzが高いほうです。

RzをRaに換算するにはどうすればよいですか?

換算はできません。両者の比は面の性格に依存し、均一に研削した面の約3から、孤立した傷のある面では10を大きく超えるところまで動きます。Rz ≈ 4 × Raのような目安は特定の加工法を説明したもので、区別が本当に効く場面でこそ外れます。図面がRzを指示しているなら、Rzを測ってください。

RaとRzはどちらが優れていますか?

優劣はなく、答える問いが違います。一般的な肌と加工の安定性を管理するにはRaを使います。深い谷が1本あるだけで破綻する場面、つまりシール面、疲労荷重を受ける面、塗膜の密着面、軸受面にはRzを使います。重要部品では両方を指定することも珍しくありません。

表面性状の記号にISO 1302はまだ有効ですか?

いいえ。ISO 21920シリーズが2021年12月にISO 4287、ISO 4288、ISO 1302を置き換え、図示は現在ISO 21920-1に従います。ISO 1302の記号を使った古い図面は読み取れますし流通もしていますが、新規図面がISO 1302を引用するのは廃止規格を引用していることになります。

同じ部品なのに、2つの試験所でRaが違うのはなぜですか?

多くの場合、フィルタのカットオフ値、評価長さ、測定方向のいずれかです。粗さは筋目に直交する方向で測ります。筋目に沿ってなぞれば、はるかに低い値が出ます。カットオフ値λcを長く取れば、うねりが粗さとして多く数えられ、Raは上がります。パラメータ、カットオフ、筋目方向を図面に明記すれば、この種の食い違いはほぼなくなります。

参考資料

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Ra vs Rz: Same Number, Two Different Surfaces