201と304のステンレス:家具仕様書に書くこと

201と304のステンレスの違いは、浴室や海辺で金物が何年もつかを決めます。行単位で比較できる仕様書の書き方と、磁石では絶対に判別できない現場試験をまとめました。

201と304のステンレス:家具仕様書に書くこと

ドバイのホテルが浴室キャビネットの取っ手を再発注しました。最初のロットが、湿度の高い夏をひとつ越えたところで茶色い斑点を出したからです。工場の答えは技術的には正しく、商売としては役に立ちません。「材料はステンレスです」。確かにステンレスです。ただしグレードは201で、201は海辺の浴室の塩分に耐えるグレードではありません。

201と304のステンレスの違いは、ふつう価格の話として扱われます。家具金物や輸出仕様書の上では、これは腐食の話です。両者は、部品が濡れた場所、蒸し暑い場所、海に近い場所に取り付けられるまでは、交換可能に見えます。以下では、バイヤーが実際に比較する項目、両者を分ける現場試験、そして「どちらを出荷したか誰にも推測させない」ために仕様書へ足すべき行をまとめます。

201と304のステンレス:バイヤーが実際に並べる比較表

項目 201 304
組織 オーステナイト系(Cr-Mn) オーステナイト系(Cr-Ni)
クロム、ASTM A240 16.0–18.0% 18.0–20.0%
ニッケル、ASTM A240 3.5–5.5% 8.0–10.5%
マンガン、ASTM A240 5.5–7.5% 最大2.0%
モリブデン なし なし
発注書に書ける呼び方 UNS S20100 · EN 1.4372 UNS S30400 · EN 1.4301
焼なまし状態で磁石に付く 付かない 付かない
冷間加工後に磁石に付く わずかに付くことがある わずかに付くことがある
200系と300系を分ける現場試験 マンガン点試験:発色する マンガン点試験:発色しない
向いている用途 乾燥した屋内の金物、装飾部品、低塩素環境 浴室、厨房、遮蔽された沿岸部
最初に壊れる箇所 塩素環境でエッジ、溶接部、傷から孔食と錆 沿岸部では茶しみ、強い塩素環境では孔食
一段上の選択 304 316

成分の行を、物語全体の要約として読んでください。遠い親戚どうしのマーケティング上の違いではありません。201はニッケルの大部分をマンガンで置き換えて価格を下げています。そしてニッケルは、耐食性を担う2つの元素のうちの1つです。バイヤーが製鋼メーカーの化学成分を見たいと言えば、Acerinoxなどが1.4372のデータシートを公開しています。

効くのはニッケル量であって、ラベルではない

ステンレスが錆びないのは、クロムが自己修復する薄い酸化皮膜をつくるからです。ニッケルは別の仕事をします。オーステナイト組織を保ち、とくに塩化物中での全体的な耐食性を押し上げます。ニッケルを半分にしてマンガンを足しても、光沢があり、非磁性で、溶接でき、切削しやすい金属のままです。目視検査は通りますし、機械加工も気持ちよく決まります。失われるのは余裕です。

その余裕は、バイヤーが決して写真に撮らない場所で使われます。ブラケットのせん断エッジ、タオルバーの溶接部、塩を溜め込む取っ手の傷、水が溜まるレールの下面。孔食はそうした隙間から始まり、一度穴が開けば進み続けます。実務的な結論は単純です。201と304は乾燥した内陸のショールームではほぼ同じように振る舞い、浴室、プールサイド、海辺の住まいではっきり分かれます。

正直な補足が2つあります。第一に、304も不死身ではありません。本当に厳しい塩化物環境に属するのは316で、304から316への移行は、価格帯をひとつ上げる同じ議論です。第二に、これは201が悪い材料だという話ではありません。屋内・乾燥・装飾用の金物にとっては、妥当なコスト判断です。失敗するのはグレードではなく、選ばれていない環境へ201を黙って送り込むことです。

磁石はグレードの試験ではない

毎週、バイヤーが箱を開け、取っ手に磁石を当てて、何かを結論づけます。たいてい間違っています。

200系も300系も、焼なまし状態のオーステナイト系はほぼ非磁性です。英国ステンレス協会は焼なましオーステナイト鋼の透磁率を約1.0としており、手持ちの磁石では反応しません。冷間加工がこれを変えます。成形、伸線、せん断、機械加工でオーステナイトの一部がマルテンサイトに変わり、マルテンサイトは強磁性なので、冷間伸線した棒やせん断エッジは磁石に引かれます。同協会は、これが従来の300系にも200系にも当てはまると明記しています。

つまり磁石が答えるのは「この部品は冷間加工されたか、どれくらい加工されたか」だけです。201と304は分けられません。現場で200系と300系を分けるのはマンガン点試験です。試薬を一滴落とすと、200系は定義上発色し、300系は発色しません。オーストラリア・ステンレス協会のグレード確認ガイドにそう書かれています。締結部品にこの手間がないのは、グレードがボルト頭に刻印されているからです(A2-70とA4-80 ステンレスボルトの刻印 の話です)。家具の取っ手には刻印がほとんどないので、仕様書がその役目を負います。

簡易試験 200系 300系
磁石、焼なまし 付かない 付かない
磁石、冷間加工後 わずかに付くことがある わずかに付くことがある
マンガン点試験 発色 発色しない
モリブデン点試験 発色しない 316は発色、304は発色しない

点試験には2つの決まりがあります。表面に跡が残るので目立たない場所で行うこと。定性試験であり、置き換えを見つけるには十分でも、1ヒートを証明するには足りないこと。証明が必要なら、製鋼メーカーのEN 10204 3.1証明書を取り、ヒート番号と部品が一致するか確認し、判断を誤ったときの損失が大きいならPMI(携帯式成分分析)も行います。EN 10204 3.1と2.2の違い は別の記事の主題です。

201が最初に壊れる場所

失敗はほぼ常に塩化物と時間の掛け算で、しかも地理位置は多くの仕様書が認めたがる以上に重要です。オーストラリア・ステンレス協会の沿岸腐食ガイドは率直です。茶しみ、つまり腐食による表面の変色は、海面からおよそ5km以内で最も多く発生し、海に近いほど悪化します。風当たり、湿度、汚染が重なる条件では、20km以上離れていても現れます。

これは304だけの問題ではありません。201では同じ条件がより早く、より深く効きます。孔食抵抗の出発点が低いからです。ですからグレードではなく環境で並べてください。

  • 乾燥した屋内、空調あり:装飾金物や低荷重のトリムに201は妥当です。誰も気づきません。
  • 浴室、厨房の水はね部分、屋内プール:304が下限です。洗剤や塩素水が常時ある場所は316が正解です。
  • 海から数km以内、または吹きさらしのバルコニー:201は除外します。最低304、バイヤーが触れて見る部位は316。
  • 融雪塩のある気候:海岸と同じ理屈を、ドアの下半分や台車の脚に当てはめます。

仕様書に何を書くか

グレードをめぐる争いの多くは、仕様書に「ステンレス」としか書かれていないことから始まります。他社と行単位で比べられるブロックを渡せば、議論は意見から文書に移ります。

仕様書の項目 書く内容 理由
グレード ステンレス ASTM A240 Type 201(UNS S20100、EN 1.4372) 分類ではなく合金を特定する
規格 ASTM A240 / EN 10088-2 どの成分範囲が適用されるか示す
表面 2B、BA、No.4、または別途指定 表面状態は耐食性と外観の両方に効く
証明書 ヒートごとのEN 10204 3.1製鋼証明書 トレーサビリティと請求の根拠
使用環境 乾燥屋内/浴室/沿岸 グレード選定をレビュー可能な決定にする
代替条項 「書面承諾なきグレード変更を認めない」 静かな置き換えを止める一文

最後の行こそ交渉する価値があります。代替条項は、不意打ちを決定に変えます。決定は値付けできますし、金曜日に304が足りなくなった工場に対して、自社QCが執行できる根拠にもなります。

もう1行は、表ではなく部品の隣に置きます。グレードは、バイヤーがすでに見ている写真の上に載せます。仕様書は一人が一度読むだけですが、注記入りの製品画像はバイヤーのWhatsApp、比較表、クレームの中を旅します。品番と材質グレードを載せる注記は、寸法を載せる注記と同じものです。工業製品の仕様図 が使っている配置がそれで、バイヤーが転送するのはこちらの版です。

事例:同じ取っ手、3つの市場

同じ取っ手、同じ図面、3つの仕向地。変わるのは仕様書の1行と価格の1行です。

仕向地 環境 宣言するグレード 変わること
内陸倉庫向け家具小売 乾燥屋内、低塩素 201 最も安い妥当な選択。ただし文書に残す
湿度の高い都市のホテル浴室 湿潤、洗剤、高温 304 価格を上げ、表面と証明書を追加
海辺のヴィラ、吹きさらし 数km以内の塩害 316 304を飛ばし、環境を図面に記載

多市場で展開するバイヤーは、国内向けに201、輸出向けに304という分割BOMを受け入れることがよくあります。ただし仕様書でその差が見えている場合に限ります。半年後の錆のクレームで知ることは受け入れません。

コンテナ出荷前のサンプル確認

  • 当該ヒートのEN 10204 3.1製鋼証明書、ヒート番号が判読できる
  • 証明書のヒート番号が部品または梱包と一致する
  • 図面にUNSとENの呼び方でグレードを記載(「SS201」だけにしない)
  • ロットごとに1個、目立たない場所でマンガン点試験
  • 表面状態(2B / BA / No.4)を記録し、承認サンプルと照合
  • 表面仕様に応じて溶接部を研削、酸洗、不動態化
  • 使用環境を仕様書に書く(暗黙にしない)
  • 発注書に代替条項を入れる
  • 写真注記、仕様表、カタログの3か所でグレードと表面が一致する

よくある質問

201ステンレスは家具に向いていますか?

屋内なら向いており、水の近くでは向きません。201はニッケルの大部分をマンガンで置き換えたオーステナイト系で、乾燥した装飾金物やトリムには十分ですが、塩化物が孔食を進める浴室、厨房、沿岸部では弱くなります。部品が置かれる環境で決め、そのうえでグレードを文書に残してください。

304ステンレスに磁石は付きますか?

焼なまし状態では付かず、冷間加工されたものにはわずかに付くことがあります。冷間成形、伸線、せん断、機械加工はエッジや表面にマルテンサイトを生み、この相は磁性を持ちます。英国ステンレス協会は焼なましオーステナイトの透磁率を約1.0としており、磁石が示すのは加工履歴であってグレードではありません。

201と304のニッケル量はどれくらい違いますか?

ASTM A240では、201のニッケル範囲は3.5–5.5%、304は8.0–10.5%です。201はマンガン5.5–7.5%で補い、304のマンガン上限は2.0%です。価格差も耐食性の差も、この置き換えから生まれます。

304が201に置き換えられたかどう見分けますか?

EN 10204 3.1の製鋼証明書を取り、ヒート番号を部品と照合してください。そのうえで隠れた場所でマンガン点試験を行います。200系は発色し、300系は発色しません。磁石では答えは出ませんし、鏡面仕上げでも出ません。

出典