LED照明の仕様は、サプライヤーが完全に正直であっても失注しうる唯一の領域です。典型的なスペックシートに並ぶ数字の半分は、工場側とバイヤー側で意味が食い違っているからです。よくある例が、IP67 は IP65 より上位だと思い込んだバイヤーが IP67 を指定し、納品された器具が最初の高圧洗浄で浸水するというものです。
IP67 は IP65 の上位ではありません。IEC 60529 に明文で書かれています。以下では、バイヤー側の技術者が実際にチェックする行を一つずつ取り上げ、その数字が正当に何を許容するのか、そしてどの試験報告書がそれを証明するのかを整理します。
LED照明の仕様:バイヤーが必ず見る9行
| 項目 |
バイヤーが判断していること |
弱い書き方 |
使える書き方 |
| 保護等級(防塵・防水) |
高圧洗浄と水たまりの両方に耐えるか |
IP67 |
IP65/IP67(IEC 60529 に基づく二重表示) |
| 耐衝撃性 |
いたずら、フォークリフト、体育館 |
IP66/IK08 |
IK08(IEC 62262、独立した行として) |
| 光束 |
器具としての実際の出力 |
6000 lm LED |
6000 lm(器具値、LM-79) |
| 入力電力と効率 |
省エネ規制対応とランニングコスト |
50 W |
48.6 W、123 lm/W、LM-79 |
| 色温度と Duv |
壁に並べた2台が同じ色に見えるか |
3000 K |
3000 K 呼称、7ステップ四辺形 |
| 演色性 |
小売・ショールームで通るか |
CRI 80 |
Ra ≥ 80、R9 ≥ 0 |
| 配光角 |
狙った場所を照らすか |
60° |
60° ビーム(50%)、96° フィールド(10%) |
| 光束維持率 |
保証リスク |
50,000 h |
L70 ≥ 50,000 h、B50、LM-80 からの TM-21 |
| マークと書類 |
合法的に販売できるか |
CE |
LVD + EMC + RoHS の DoC、EU 責任者の記載 |
以降の各セクションは、この表の1行ずつを解説したものです。
IP等級の読み方:第2記号は6を超えると累積しない(IP65 と IP67 の違い)
LED 輸出で最も高くつく誤解がこれで、しかも規格本文が明示しています。IEC 60529 では第1特性数字は累積的で、その等級は「それより下位のすべての保護等級にも適合している場合に限る」と適用されます。ところが第2特性数字は、6 を超えると累積しません。
「第2特性数字が 6 までの表示は、それより下位のすべての特性数字の要求事項にも適合していることを意味する……第2特性数字が 7 または 8 のみで表示された外郭は、噴流水(第2特性数字 5 または 6 で表される)にさらされる用途には適さないとみなされる。二重表示されていない限り、数字 5 または 6 の要求事項に適合する必要はない。」
規格はこの後に二重表示の表を載せており、そこで使われている2つの語は、そのまま見積書に転記する価値があります。
| 噴流水試験に合格 |
水没試験に合格 |
表示 |
IEC 自身の用語 |
| 5 |
7 |
IPX5/IPX7 |
Versatile(汎用) |
| 6 |
7 |
IPX6/IPX7 |
Versatile(汎用) |
| 5 |
8 |
IPX5/IPX8 |
Versatile(汎用) |
| 6 |
8 |
IPX6/IPX8 |
Versatile(汎用) |
| — |
7 |
IPX7 |
Restricted(限定) |
| — |
8 |
IPX8 |
Restricted(限定) |
「Restricted」の外郭は「一時的または継続的な水没にのみ適し、噴流水にさらされる用途には適さないとみなされる」ものです。つまり高圧洗浄機で清掃する立体駐車場の器具に必要なのは IP65 か IP66 であって、数字が大きく見えても素の IP67 は間違った製品です。
RFQ への回答に必ず入れておきたい IP の事実が、あと3つあります。
- IP68 に水深の定義はありません。 規格は数字 8 を「製造業者と使用者との間で合意される条件(ただし数字 7 より厳しい条件)」での水没と定義しています。「IP68 = 2 m」という表記は当事者間の私的な取り決めであって、IEC の要求事項ではありません。自社で試験した水深と時間を明記してください。
- IP67 は単純に「1 メートル」ではありません。 試験は、高さ 850 mm 未満の外郭では最下点を水面下 1,000 mm に、高さ 850 mm 以上の外郭では最上点を水面下 150 mm に置き、30 分間保持します。背の高いボラード灯の IP67 は、ほとんど水に浸かっていない状態で取得されています。
- IP 試験は形式試験です。 規格は「この規格で規定する試験は形式試験である」と直接述べています。IP 等級が証明するのは代表サンプル1台の合格であって、コンテナ内の全数が密閉されていることではありません。
参考までに、噴流水試験は水量が一桁違います。IPX5 は 6.3 mm ノズルで 12.5 l/min、IPX6 は 12.5 mm ノズルで 100 l/min、いずれも 2.5–3 m の距離からです。
IK は IP とは別の規格
「IP66/IK08」を1つの等級のように書く誤りは、何千枚ものスペックシートに載っています。耐衝撃性は IEC 62262 という別文書(CENELEC の EN 50102 がベース)の管轄で、独自のコード文字と独自の表を持ちます。IEC 60529 は適用範囲の中で機械的衝撃を明示的に切り離し、「関連する製品規格で扱う事項」として挙げています。
| IK コード |
IK00 |
IK01 |
IK02 |
IK03 |
IK04 |
IK05 |
IK06 |
IK07 |
IK08 |
IK09 |
IK10 |
IK11 |
| 衝撃エネルギー (J) |
保護なし |
0.14 |
0.2 |
0.35 |
0.5 |
0.7 |
1 |
2 |
5 |
10 |
20 |
50 |
テンプレートを直すついでに、訂正が2点あります。IK01 は 0.14 J であって 0.15 J ではありません(ウェブ上の多くの表が間違っています)。そして IK11(50 J)は存在します。2021 年の追補で追加されました。もう1つ、IEC の9番目の水に関する数字は「IPX9」と書きます。IP69K の「K」は自動車系の出自によるもので、「IP69K per IEC 60529」という引用は存在しない規定を指しています。
「3000 K」が実際に許容する範囲 — ANSI C78.377 の色温度許容差
呼称色温度はラベルであって測定値ではありません。ANSI/NEMA/ANSLG C78.377 では、呼称色温度ごとに目標色温度と、その周囲の許容四辺形が定められています。2008 年版 Table 1 より。
| 呼称 CCT |
目標 CCT と許容差 |
目標 Duv と許容差 |
| 2700 K |
2725 ± 145 K |
0.000 ± 0.006 |
| 3000 K |
3045 ± 175 K |
0.000 ± 0.006 |
| 3500 K |
3465 ± 245 K |
0.000 ± 0.006 |
| 4000 K |
3985 ± 275 K |
0.001 ± 0.006 |
| 5000 K |
5028 ± 283 K |
0.002 ± 0.006 |
| 6500 K |
6530 ± 510 K |
0.003 ± 0.006 |
つまり完全に適合した「3000 K」の器具でも、実測値は 2,870 K〜3,220 K のどこにでも入りえます。適合品どうしを並べても目に見えて色が違うことがあり、クレームを入れるバイヤーの側が間違っているわけではありません。
理由は規格自身の注記にあります。この四辺形は「7ステップ MacAdam 楕円にほぼ相当する」ものです。より厳しい3ステップや5ステップのビニングは、ANSI のビンを超えるメーカー側の任意の約束であって、「ANSI C78.377 に適合」が意味するところではありません。バイヤーがホテルの廊下に使うなら、厳しいビンを明示的に売ってください。「3000 K」としか言われていないなら、それが何を許容するのかをコンテナ出荷前に伝えてください(引用は現行版の C78.377-2024 とし、上の数値は実際に提示できる 2008 年版のものだと明記します)。
色は二次元でもあります。黒体軌跡からの距離である Duv は、「4000 K」の器具2台が一方は緑、一方はピンクに見える理由です。Duv のない色温度は、仕様として半分しか書けていません。
Ra 80 は赤について何も語らない
演色性は CIE 13.3-1995 で定義されており、スペックシート上の「CRI」は一般指数 Ra を指します。飽和した赤の試験色である R9 は別立てで報告されるため、まともな調達仕様は両方を指定します。DesignLights Consortium の現行技術要件も、2つの独立した閾値として書いています。屋内向け製品は Ra ≥ 80 かつ R9 ≥ 0、屋外・高天井向け製品は Ra ≥ 70(高天井は R9 ≥ −40 を許容)、屋外製品は R9 の報告が必須です。
TM-30 が CRI を置き換えたわけでもありません。同じ文書は TM-30(IES Rf ≥ 70、Rg ≥ 89)と CIE 13.3(Ra、R9)を選択可能な代替として提示しており、どちらでも要件を満たします。CRI はもう時代遅れだと主張するサプライヤーは、バイヤーの実際の仕様書と喧嘩をしていることになります。
器具の光束はチップの光束ではない
このカテゴリで最も水増しされやすい数字です。器具の効率(lm/W)は、パッケージ効率に器具全体の効率を掛けたもので、その損失は小さくありません。米国エネルギー省(DOE)の内訳を引きます。
| 製品 |
LED パッケージ効率 |
熱 |
電源 |
光学 |
総合効率 |
器具効率 |
| ベースライト(トロファ) |
200 lm/W |
93% |
88% |
92% |
75% |
150 lm/W |
| 屋外エリア照明 |
175 lm/W |
90% |
92% |
87% |
72% |
126 lm/W |
| 電球形ランプ |
200 lm/W |
86% |
84% |
88% |
65% |
130 lm/W |
DOE は別の資料でもっと端的に、熱・電源・光学の損失は「効率を 30% 超も低下させうる」と述べています。LightingEurope は、これが誤表示として表れる4つの型を挙げています。器具光束の代わりにモジュール光束を出す、実際の器具内動作温度ではなく 25 °C のデータを出す、総入力電力ではなくモジュール電力を出す、内蔵電源の製品と別置電源の製品を比較する、の4つです。
バイヤーの補助金プログラムが課してくる具体的な効率目標としては、DLC の現行最低値が使いやすい下限になります。ベースライト 120 lm/W、リニア一般照明 125、高天井 135、屋外エリア・道路 125、屋内スポット系 95 で、いずれも LM-79 での測定が前提です。同じ文書は 力率 ≥ 0.9、THD ≤ 20%、最低5年保証も要求していますが、この3行は多くの工場スペックシートから抜け落ちています。
これらの数字の見せ方について実務的な注意を1つ。5社の見積を比較するバイヤーが開くのは、5枚の製品写真と、せいぜい1つの PDF です。実測寸法と等級の吹き出しを製品画像そのものに固定できるツール——エッジにスナップする寸法計測、そして各モールの画像サイズでの書き出し——を使えば、「IP65/IP67 · 126 lm/W · Ra 80 / R9 0」を比較が実際に行われる場所に置けます。生成ではなく幾何学的に配置すべき理由は単純です。AI 画像生成はもっともらしく見えて間違った数値を平気で描きますし、製品画像上の誤った等級表示は誤字ではなく「表示」(法的な主張)だからです。
配光角は 50%、フィールド角は 10%
同じ器具に対する2つの異なる数字で、その差は小さくありません。IES の定義はこうです。
- 配光角(ビーム角) — 「光度が最大光度の 50% となる2つの方向の間の角度」
- フィールド角 — 「光度が最大光度の 10% となる2つの方向の間の角度」
DOE の計算例では、単純な余弦配光で配光角 120°、フィールド角 169° になります。さらに規格間の食い違いも現存します。ANSI/IES RP-16 は最大光度を基準に測り、ANSI C78.379 はビーム中心光度を使うため、非対称配光では値がずれます。自社の数字がどちらなのかを明記してください。
どの試験報告書が何を証明するか — LM-79 と LM-80 の違い
| 報告書 |
測定対象 |
分からないこと |
| LM-79(現行:LM-79-24) |
完成した器具またはランプの光学・電気性能:光束、入力電力、効率、色、配光 |
寿命に関すること全般。「LED パッケージ、モジュール、アレイには適用しない」 |
| LM-80(現行:LM-80-21) |
LED パッケージの、規定ケース温度における経時的な光束維持率 |
完成品の熱設計や電源については何も分からない |
| TM-21(現行:TM-21-21) |
LM-80 のデータから長期の光束維持を推定 |
測定ではなく推定であり、試験時間からどこまで先を報告してよいかに上限がある |
LM-79 報告書を受け取ったら、確認すべき点が2つあります。1つ目、これはある一時点のスナップショットです。「寿命の定格、経時的な性能変化(光束維持率など)、LED のケース温度は扱わない」と明記されています。2つ目、記載内容は測定装置に依存します。積分球の報告書には配光データが一切ありません(配光角なし、配光曲線なし、IES ファイルなし)。一方でゴニオフォトメータの報告書には色のデータがないことが多いです。どちらで測ったかを必ず聞いてください。
中国製スペックシートの多くはいまだに LM-79-08、LM-80-08、TM-21-11 を引用しています。2版古く、バイヤー側の仕様担当者はそこに気づきます。
B値のない L70 は「半数の器具」の話 — 光束維持率の読み方
「L70 50,000 時間」は不完全な主張です。L は光束の閾値で、B はその閾値を下回った母集団の割合です。B が省略されているときの業界の既定値は B50、つまり器具の半数です。LightingEurope ははっきりこう書いています。「Median Useful Life とは、LED 器具の母集団の 50%(B50)が光束低下に至る時点であり……通常は Lx として、つまり B50 の表記なしで表される」。
B10 は B50 よりはるかに強い約束で、コストも上がります。そしてどちらの文字も、突然死はカバーしません。電源が止まるといった突発故障は C 値として別に管理されるため、L70/B50 を満たしている母集団の中で、一定割合が完全に故障していることはありえます。具体的なベンチマークとしては、DLC は白色光製品に L70 ≥ 50,000 時間 を要求しており、その根拠は LM-80 と実機内温度測定を伴う TM-21、または LM-84 と TM-28 です。
認証マークと必要書類
| 市場 |
要求されるもの |
サプライヤーが間違えやすい行 |
| EU |
LVD 2014/35/EU、EMC 2014/30/EU、RoHS 2011/65/EU(附属書 I カテゴリ5 = 照明機器)に基づく CE、加えてエコデザインとエネルギーラベル |
CE は自己宣言で、LVD 自身が「本指令には、公認機関の関与を要する適合性評価手続は存在しない」と述べています。ただし技術文書には実際の試験報告書が必要で、10 年間の保管義務があります |
| EU |
域内に設立された経済事業者を、製品または包装に表示すること |
Regulation (EU) 2019/1020 第4条が 2021 年 7 月 16 日から適用されています。EU 域内の責任者がいなければ、合法的に上市できません |
| GB |
SI 2024/696 により、UKCA と並行して、あるいは UKCA に代えて CE を無期限で受け入れ |
英国向けに CE の期限が迫っているという事実はありません |
| US/Canada |
OSHA が認定した NRTL による認証(器具は UL 1598、LED 機器は UL 8750) |
UL は法的なカテゴリ名ではなく1社の名前です。Intertek の ETL マークもまったく同等に有効です |
| US |
FCC Part 15 Subpart B、サプライヤー適合宣言(SDoC)による |
無線を持たない照明器具に FCC ID はありません。FCC ID は認証(certification)を受けた機器にのみ付きます |
自社ブランドを貴社の器具に付ける EU バイヤーは、LVD 第10条により法的な製造業者になります。OEM 契約に合意する前に知っておく価値のある点です。
LED照明の仕様:見積前チェックリスト
このリストを全行埋められる LED照明の仕様を出すサプライヤーは、高く見積もって、揉めることが少なくなります。バイヤーが実際に読む製品仕様書を成立させているのと同じ規律を、数字をごまかしやすいカテゴリに適用しただけです。そして配線でも同じ問題が起きます。2つの換算慣行のせいで 20% の差が生まれるAWG と mm² のケーブル仕様がそれです。スペックを載せた製品画像が実際どう見えるかは、注記入り製品画像の例が手っ取り早い答えになります。
FAQ
輸出バイヤー向けの LED照明 仕様書には何を書けばいいですか
9行です。保護等級(噴流水と水没の両方が関わるなら二重表示)、IEC 62262 を引用した耐衝撃等級、LM-79 報告書に基づく器具光束と入力電力、その2つから計算した効率、Duv とビニング許容差つきの色温度、Ra と R9、50% 点であると明記した配光角、時間と B 値をそろえた L70、そして各種マークと EU 責任者の氏名です。これより少ないと、バイヤー側の技術者が自分に有利な前提で空欄を埋めることになります。
IP67 は IP65 より優れているのですか
いいえ。守る対象が違います。IEC 60529 は、第2数字が 7 または 8 のみで表示された外郭は「噴流水にさらされる用途には適さないとみなされる」と述べています。IP65 は噴流水、IP67 は一時的な水没が対象です。両方に耐える必要がある製品は両方の試験を受け、IP65/IP67 のように二重表示されます。規格はこれを「Versatile」な用途と呼び、素の IP67 は「Restricted」です。
3000 K の LED は、規格に適合したままどれだけ色温度がずれますか
ANSI C78.377 の 2008 年版の表では、呼称 3000 K の目標値は 3045 K、許容差は ±175 K です。おおよそ 2,870 K〜3,220 K の範囲で、規格が「7ステップ MacAdam 楕円にほぼ相当する」とする四辺形の内側です。3ステップや5ステップのより厳しいビニングは追加の任意表示であって、ANSI の呼称値を満たすことの一部ではありません。
LM-79 と LM-80 の違いは何ですか
LM-79 は完成した器具またはランプを、ある一時点で測ります。光束、電力、効率、色、配光です。そして「LED パッケージ、モジュール、アレイには適用しない」と明記されています。LM-80 は、制御されたケース温度のもとで LED パッケージの出力が時間とともにどう低下するかを測ります。どちらも単独では寿命の主張になりません。LM-80 のデータから L 値を推定する手法が TM-21 です。
「50,000 時間」は器具が 50,000 時間もつという意味ですか
いいえ。通常は L70 かつ B50、つまり母集団の半数が初期光束の 70% まで落ちる時点を指します。電源が完全に止まるような突発故障は C 値として別に数えるため、母集団としては L70/B50 を満たしたまま、一部の個体が完全に故障していることがありえます。B 値を必ず確認してください。サプライヤーが B 値を答えられないなら、B50 だと考えてください。
出典・参考資料