製作寸法と目地共寸法の差である 10 mm が、あなたのれんが見積と設計者の図面が同じ壁を指しているかどうかを決めます。一方は実際に焼成し、パレットに積み、出荷するれんがそのものです。もう一方は、そのれんがが目地をまとったときに壁の中で占める空間です。どちらか片方しか記載しなければ、川下の誰かがもう片方を推測することになります。たいてい推測は外れ、たいていコンテナが出港したあとに判明します。
これは端数処理の議論ではありません。窓の開口部では、「収まるれんが」と「現場で切断され、その費用が買い手に回るれんが」の差になります。
製作寸法と目地共寸法の定義
同じ一つのれんがを三種類の寸法が説明していて、そのいずれもがそれぞれの文脈では正しい寸法です。
製作寸法(work size) は、目地を含まない、れんが単体について製造者が宣言する寸法です。英国の粘土れんがで最も広く使われている製作寸法は 215 × 102.5 × 65 mm です。
目地共寸法(coordinating size) は、製作寸法に目地の取り代を加えた寸法、つまり一個のれんがが仕上がった壁の中で占める空間です。呼び 10 mm の目地を前提に、英国れんが協会(BDA)は英国の目地共寸法を 225 × 112.5 × 75 mm としています。
実寸法 は、窯から出てきた寸法そのものです。粘土は収縮し、その収縮量は同一ロット内でも一定ではありません。したがって宣言された製作寸法は目標値であり、実物はその近くに着地するだけで、ぴたりと一致するわけではありません。どれだけ近いかは、EN 771-1 に基づいて宣言される寸法許容差区分とレンジ区分で決まります。
| 寸法の種類 | 何を表すか | 誰が使うか | 目地を含むか |
|---|---|---|---|
| 製作寸法(EN work size)/規定寸法(ASTM specified size) | 宣言どおりに製造されたれんが | 発注書、パッキングリスト、品質確認 | 含まない |
| 目地共寸法(EN coordinating size)/呼び寸法(ASTM nominal size) | そのれんがが壁の中で占める空間 | 割付け、開口寸法、数量拾い | 含む |
| 実寸法 | 目の前にある、実測したれんが | 受入検査、係争処理 | 含まない |
厄介なのは、取引の当事者双方がたいてい片方の数値だけを公開し、もう片方を前提として想定してしまう点です。「215 × 102.5 × 65」と書かれた見積書と、「225 の段割り」と書かれた図面は、まったく同じ製品を指しています。ただし、それが見えるのは既にこの体系を知っている人だけです。市場別の数値をひととおり突き合わせたい場合は、標準れんが寸法の一覧に主要な規格が並記されています。
れんが寸法欄:公開する価値のある8項目
以下は、仕様書、見積書、あるいは製品図の寸法欄にそのまま貼り込むための項目です。六行ほどで済み、やり取りの大半をなくせます。
| # | 項目 | 何に答えるか | 記入例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 宣言製作寸法(長 × 幅 × 高) | 私が買うのは実際に何か | 215 × 102.5 × 65 mm |
| 2 | 宣言の根拠規格 | 誰のルールに従うか | BS EN 771-1 |
| 3 | 寸法許容差区分 | 平均値は宣言寸法からどれだけ外れてよいか | T2 |
| 4 | レンジ区分 | 同一試料内でれんが同士がどれだけ違ってよいか | R1 |
| 5 | 前提とする目地厚 | 次の数値はどの目地取り代で計算したか | 呼び 10 mm |
| 6 | 目地共寸法 | れんが一個が壁の中で占める空間は | 225 × 112.5 × 75 mm |
| 7 | 縦方向の段数 | 段はどう積み上がるか | 4段 = 300 mm |
| 8 | 目地共条件 | れんが + 目地2本か、+ 1本か、目地なしか | 開口部は CO+ |
誰もが揉めるのは項目1と6です。その1と6を主張の通るものにするのが項目3、4、5です。
各項目の書き方
項目1と2:製作寸法と、その宣言根拠となる規格
製作寸法は買い手の市場が読む順序で書き、そのうえで規格名を明記します。BS EN 771-1 では製造者が製作寸法を宣言します。米国の体系ではこれに相当するのが規定寸法(specified dimension)で、米国れんが協会(BIA)テクニカルノート Technical Note 10 は「モルタルを考慮しない、れんがの想定製造寸法。プロジェクト仕様書および発注書で用いるもの」と定義しています。
製作寸法の欄に目地共寸法や呼び寸法を書いてはいけません。これは輸出用れんが書類で最も多い誤りで、しかも見積書があらゆる言語に翻訳されるたびに生き延びます。
項目3と4:寸法許容差区分とレンジ区分
寸法許容差(tolerance) は、宣言した製作寸法と試料の平均実寸法との差です。レンジ(range) は試料内部のばらつき、すなわち最大のれんがと最小のれんがの差です。あるロットが 215 mm にきれいに中心を合わせていても、レンジが広ければ積み上がりは不揃いに見えます。
EN 771-1 はこの両方を宣言区分として定義しています。BDA は英国の標準製作寸法についての数値を公表しています。
| 宣言寸法(mm) | T2 の範囲 | T2 の許容差 | T1 の範囲 | T1 の許容差 | R2 のレンジ | R1 のレンジ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 215 | 211–219 | ±4 mm | 209–221 | ±6 mm | 4 mm | 9 mm |
| 102.5 | 99–105 | ±3 mm | 98–106 | ±4 mm | 3 mm | 6 mm |
| 65 | 63–67 | ±2 mm | 62–68 | ±3 mm | 2 mm | 5 mm |
Tm と Rm はそれぞれ三つ目の選択肢で、製造者が独自に宣言する値です。上の区分より厳しくすることも緩くすることもできます。Tm や Rm を宣言するなら、その数値も必ず公開してください。そうでなければ宣言は何も意味しません。実務的な判断としては、買い手の設計が端正で揃ったれんが積みを求めているなら、必要なのは厳しいほうの区分であり、それは遅かれ早かれ表面化します。あらかじめ T1 を宣言するほうが、試験施工パネルを不合格にされてから気づくより安上がりです。
項目5、6、7:目地厚、目地共寸法、段数
目地厚が書かれていない目地共寸法は、裏付けとなる計算のない数値です。「呼び 10 mm 目地」と書けば、読み手は 215 × 102.5 × 65 から 225 × 112.5 × 75 を自分で組み立て直せますし、仕様が 12 mm 目地を求めていれば、そちらでも正しく組み立て直せます。
誤差が積み上がるのは段数です。英国の体系では 75 mm の目地共高さにより4段で 300 mm になります。米国の体系では BIA Technical Note 10 が規格名ごとに段数を公表していて、Modular は3段で 8 in.(203 mm)、Queen や King は5段で 16 in.(406 mm)です。段数の一行を書いておけば、買い手が自分で導き出して5段目で間違える事態を防げます。
項目8:その数値がどの目地共条件のものか
ほとんど誰も公開しないのに、開口寸法を決めてしまうのがこの項目です。BDA はれんが積み寸法について三つの条件を示しています。
- CO+ —— れんが + 目地2本。れんが積みの開口部に用います。
- CO —— れんが + 目地1本。両端が返しになるパネルに用います。
- CO− —— れんが単体の寸法のみ。方立や、開口部の間の壁部分に用います。
自分の数値がどの条件を前提にしているかを明記してください。「225 mm(CO)」と「225 mm」は同じ情報ではありません。
記入例1:英国の粘土れんが
- 製作寸法:215 × 102.5 × 65 mm、BS EN 771-1 に基づき宣言
- 寸法許容差:T2(215 mm の寸法は平均 211–219 mm に収まる)
- レンジ:R2(同一試料内のばらつきは 215 mm 寸法で最大 4 mm)
- 前提目地:呼び 10 mm
- 目地共寸法:225 × 112.5 × 75 mm
- 段数:4段 = 300 mm
- 寸法ごとの条件の明記:開口部は CO+
六行で曖昧さがなく、どの数値も営業の見立てではなく公表された区分まで遡れます。
記入例2:米国の Modular と非 Modular れんが
米国の体系は同じ考え方を別の言葉で表し、さらにメートル法の体系にはない罠を一つ抱えています。すべてのれんがに呼び寸法があるわけではない、という点です。
BIA Technical Note 10 は呼び寸法を「れんがの規定寸法に、想定する目地の想定厚さを加えた結果」と定義し、4 in. または 8 in. のきりのよいモジュールに着地させます。Modular れんがは三種類の寸法がすべて揃っています。非 Modular のれんがには規定寸法と実寸法しかなく、呼び寸法はそもそも存在しません。 Queen れんがに呼び寸法を出したなら、それは数値を発明したことになります。
| 規格名 | 呼び寸法(幅 × 高 × 長) | 目地 | 規定寸法(幅 × 高 × 長) | 縦方向の段数 |
|---|---|---|---|---|
| Modular | 4 × 2⅔ × 8 in. | ⅜ in. (9.5 mm) | 3⅝ × 2¼ × 7⅝ in. (92 × 57 × 194 mm) | 3C = 8 in. (203 mm) |
| Modular | 4 × 2⅔ × 8 in. | ½ in. (12.7 mm) | 3½ × 2¼ × 7½ in. (89 × 57 × 191 mm) | 3C = 8 in. (203 mm) |
| Closure Modular | 4 × 4 × 8 in. | ⅜ in. | 3⅝ × 3⅝ × 7⅝ in. | 1C = 4 in. (102 mm) |
| Standard(非 Modular) | なし | ⅜ in. | 3⅝ × 2¼ × 8 in. | 3C = 8 in. (203 mm) |
| Queen(非 Modular) | なし | ⅜ in. | 2¾ × 2¾ × 7⅝ in. | 5C = 16 in. (406 mm) |
| King(非 Modular) | なし | ⅜ in. | 2¾ × 2⅝ × 9⅝ in. | 5C = 16 in. (406 mm) |
同じ規格名でも目地によって寸法が変わる点に注目してください。Modular れんがは ⅜ in. 目地なら幅 3⅝ in.、½ in. 目地なら幅 3½ in. です。呼びの 4 in. は動きません。「modular brick」としか書かれていない発注書が不完全である理由がここにあります。
寸法許容差の扱いも異なります。ASTM C216 は宣言区分ではなく、タイプごとに許容変動を割り当てます。BIA Technical Note 9A によれば、6 in. 超 8 in. まで(152〜203 mm)の規定寸法について、タイプ FBX は規定寸法から ±5/32 in.(4.0 mm)、タイプ FBS は ±1/4 in.(6.4 mm)を許容します。見え掛かり面の直角度のずれは、FBX で 3/32 in.(2.4 mm)、FBS で 1/8 in.(3.2 mm)が上限です。タイプ FBA は購入者が指定しますが、FBS より厳しくすることはできません。
宣言寸法と製造寸法のずれという話題自体が不慣れであれば、一般論は呼び寸法と実寸法で扱っています。れんがは、その最も古く最も厳格な一例にすぎません。
記入例3:ドイツの 12.5 cm モジュール
ドイツの組積は DIN 4172 のオクタメトリック体系で動いており、その基礎は 12.5 cm のモジュールです。このモジュールはれんがと目地の両方を含み、1.0 cm の目地を前提としています。れんがの規格は、モジュールから目地を差し引いて決まります。
| 規格 | l × b × h (mm) |
|---|---|
| Dünnformat (DF) | 240 × 115 × 52 |
| Normalformat (NF) | 240 × 115 × 71 |
| 2 DF | 240 × 115 × 113 |
部材寸法、つまり CO+、CO、CO− に相当するドイツ側の概念は、目地を含むれんがの個数を x として、次の式で公表されています。
- Außenmaß(外法寸法)= x × 12.5 cm − 1.0 cm
- Öffnungsmaß(開口寸法)= x × 12.5 cm + 1.0 cm
- Vorsprungsmaß(出寸法)= x × 12.5 cm
同じ出典にある細部の一つは、どんな寸法紛争にも持ち込む価値があります。実務では寸法をぴたりと守ることはできないため、小口目地を詰めるか広げるかで納まりを取り戻します。ただしその幅は 1.5 cm を超えてはなりません。これは公表された現場側の許容量であって、言い訳ではありません。目地が吸収できる範囲を超えてれんががずれていれば、その壁は閉じません。
見積が実際に壊れる場所
れんが寸法をめぐる紛争のほぼすべては、製造の問題ではなく書類の問題です。れんがに問題はありません。PDF には「215 × 102.5 × 65」と書かれていて、225 で段割りされた図面を見ていた積算担当者が、その見積はすでに目地共寸法だと想定し、少なく発注したのです。
これは説明の段落を足しても直りません。積算担当者は段落を読んでいないからです。直せるのは、図面上の寸法欄です。そこでは各数値が、それが測っている対象のすぐ隣に置かれます。製作寸法の寸法線はれんが小口だけをまたぎ、目地共の寸法線はれんがと目地をまたぎ、段数の寸法は4段ぶん立ち上がり、寸法許容差区分はそれが規定する寸法の横に印字されます。矢印を読み違える人はいません。
これが仕様図と、飾り付けた写真との違いです。仕様図の寸法は実測されたものであり、画像内の対象物のエッジに固定され、買い手のテンプレートが求めるサイズで書き出されます。キャプションに打ち込まれたものでもなければ、一度も測っていない「215 mm」をもっともらしく出力する画像生成器の産物でもありません。実測された図面は翻訳も生き延びます。「225」と書かれた矢印にドイツ語もポーランド語もスペイン語も要りません。目地共寸法を説明する文章には、優れた翻訳者と辛抱強い読み手の両方が要ります。表記の作法は建材の寸法表記の方法を、寸法欄の組み方は建材仕様図の書式をご覧ください。
れんが寸法欄チェックリスト
- 製作寸法を、単なる「寸法」ではなく製作寸法(または規定寸法)として明記していること
- 宣言の根拠規格を明記していること:BS EN 771-1、ASTM C216、または DIN 4172
- 寸法許容差区分を宣言していること(T1 / T2 / Tm ——Tm なら数値も添える)
- レンジ区分を宣言していること(R1 / R2 / Rm ——Rm なら数値も添える)
- 目地共寸法や呼び寸法の隣に、前提とする目地厚を書いていること
- 目地共寸法がどの条件のものかを明記していること(CO+、CO、CO−)
- 縦方向の段数を公開し、買い手に導出させていないこと
- 米国規格では、非 Modular のれんがに呼び寸法を出していないこと
- 図面上で製作寸法と目地共寸法を二本の別々の寸法線として示していること
よくある質問
製作寸法と目地共寸法の違いは何ですか
製作寸法は製造者が宣言するれんが単体の寸法で、モルタルを含みません。目地共寸法はそのれんがに目地の取り代を加えた寸法、つまり壁の中で占める空間です。英国の標準的な粘土れんがでは、製作寸法が 215 × 102.5 × 65 mm、呼び 10 mm 目地での目地共寸法が 225 × 112.5 × 75 mm です。
英国の標準れんがの目地共寸法はいくつですか
225 × 112.5 × 75 mm です。215 × 102.5 × 65 mm の製作寸法と呼び 10 mm のモルタル目地に基づく値で、英国れんが協会(BDA)が公表しています。高さが 75 mm であることが、4段で 300 mm になる理由です。
呼び寸法は目地共寸法と同じものですか
体系が違うだけで、果たす役割は同じです。目地共寸法は EN の用語、呼び寸法は ASTM の用語で、米国れんが協会は後者を「規定寸法に想定モルタル目地を加え、4 in. または 8 in. のモジュールに丸めたもの」と定義しています。効いてくる違いは、Standard、Queen、King といった非 Modular の米国れんがには呼び寸法が存在せず、規定寸法しかない点です。
れんがの宣言にある寸法許容差区分 T2 は何を意味しますか
T2 は EN 771-1 の名前付き寸法許容差区分二つのうち、厳しいほうです。宣言寸法 215 mm については、試料平均が 211 mm から 219 mm の間、つまり ±4 mm に収まる必要があることを意味します。T1 はより緩く ±6 mm、Tm は製造者が自ら数値を宣言するもので、その数値を公開して初めて意味を持ちます。寸法許容差が扱うのは試料の平均値であり、個々のれんが同士のばらつきは別項目のレンジ区分、R2 または R1 です。
輸出用の仕様書にはどのれんが寸法を載せるべきですか
すべて、ラベルを付けて載せます。発注書とパッキングリストには製作寸法、割付けには目地共寸法、受入検査には寸法許容差とレンジの区分、立面には段数です。長文を書かずに製作寸法と目地共寸法を伝える最も安上がりな方法は、寸法線がラベルどおりの対象をきっちり測っている図面です。れんが単体を渡る矢印が一本、れんがと目地を渡る矢印が一本、いずれも手入力ではなく実際のエッジにスナップしています。これで、この種の紛争のほぼすべての背後にある想定が消えます。カタログが読まれるどの言語でも同じです。
出典・参考資料
- Brick Development Association —— Designing to Brickwork Dimensions, Technical Guide 2023(製作寸法、目地共寸法 225 × 112.5 × 75 mm、T1/T2/Tm および R1/R2/Rm の表、CO+/CO/CO− の条件)
- Brick Industry Association —— Technical Note 10, Dimensioning and Estimating Brick Masonry(呼び寸法・規定寸法・実寸法、Modular と非 Modular の寸法表、縦方向の段数)
- Brick Industry Association —— Technical Note 9A, Specifications for and Classification of Brick(ASTM C216 のタイプ別寸法許容差、直角度のずれの上限)
- ASTM C216 —— 化粧れんが標準仕様(粘土またはシェール製の中実組積ユニット)
- Ziegel Planungstool —— 2.1.2 Maßordnung:DIN 4172 のオクタメトリック体系、12.5 cm モジュール、DF/NF/2DF 規格、Baurichtmaß の式
