mAh から Wh への換算は、その製品が飛行機に載るかどうかを決めます。しかも箱に印字された mAh の数字は、輸送チェーンの誰も読んでいない数字です。20,000 mAh と表示されたモバイルバッテリーは、どの電圧を掛けるかによって 72 Wh にも 74 Wh にも 100 Wh にもなります。そして航空会社が受託の可否を判断するのは、そのうち一つだけです。
結論を先に書きます。mAh は電荷量、Wh はエネルギー量を表し、世界中のあらゆる航空輸送のしきい値は Wh で書かれています。 mAh しか載せていない仕様書は、規制が使わない唯一の数字だけを公開したことになります。
mAh から Wh への換算式と、その中に潜む間違い
計算そのものは単純です。
Wh =(mAh ÷ 1000)× V
つまずくのは式ではなく、V に何を代入するかです。リチウムイオンセルの公称電圧は 3.6–3.7 V 前後。モバイルバッテリーの USB 出力は 5 V です。ラベルの mAh はセル電圧を基準に表記されているため、その mAh に 5 V の出力電圧を掛けると、結果はおよそ 35 % 過大になります。
| 表示容量 | × 3.6 V(セル公称) | × 3.7 V(セル公称) | × 5 V(USB 出力 — 誤った組み合わせ) |
|---|---|---|---|
| 5,000 mAh | 18 Wh | 18.5 Wh | 25 Wh |
| 10,000 mAh | 36 Wh | 37 Wh | 50 Wh |
| 20,000 mAh | 72 Wh | 74 Wh | 100 Wh |
| 26,800 mAh | 96.5 Wh | 99.2 Wh | 134 Wh |
| 30,000 mAh | 108 Wh | 111 Wh | 150 Wh |
20,000 mAh の行は二度読んでください。正しく掛ければ 72–74 Wh で、旅客機の上限には十分な余裕があります。出力電圧で掛けると 100 Wh と読め、しきい値のちょうど真上に乗ります。実際には線に近づいてすらいない製品について、検査官が手を止めて質問を始めるのはこの位置です。
曖昧さを消すルールはひとつです。mAh と V は同じものを指していなければならない。 mAh の隣にセル公称電圧を併記するか、Wh を直接表記して議論そのものを省くかです。
しきい値が実際に置かれている位置
| 電池 1 個あたりのエネルギー | 旅客機での扱い | 必要になること |
|---|---|---|
| ≤ 100 Wh | 許可、航空会社の承認は不要 | 通常の機内持ち込みルール |
| 101–160 Wh | 航空会社の承認を条件に許可 | 事前承認が必要、数量制限あり(予備は通常 2 個まで) |
| > 160 Wh | 旅客手荷物では不可 | 貨物のみ、完全規制対象のクラス 9 危険物として |
セル公称電圧で逆算すると、これらのしきい値はおよそ 27,000 mAh(3.7 V で 100 Wh)と 43,200 mAh(3.7 V で 160 Wh)に落ちます。約 27,000 mAh を超える容量で売られている製品は、商品ページに書かれていようといまいと承認が必要な領域に入っています。
梱包指針が書類を決める
リチウムイオンには 3 つの梱包指針があり、どれが適用されるかは電池が製品に対してどう運ばれるかだけで決まります。
| 梱包指針 | 国連番号 | 対象 |
|---|---|---|
| PI 965 | UN 3480 | 単体で輸送されるセルおよび電池パック |
| PI 966 | UN 3481 | 機器と同梱される電池 |
| PI 967 | UN 3481 | 機器に組み込まれた電池 |
同じ電池が梱包形態によって 3 つの異なるルールセットの下を動き、書類もそれぞれ違います。さらに輸出者が不意を突かれる充電率の条件があります。PI 965 の Sections II、IA、IB で輸送される電池は、充電率 30 % 以下でなければなりません。 これは単体セルと別梱包のパックに適用され、すでに機器に組み込まれたものには適用されません。出荷前に全数を満充電にしている倉庫は、その時点で受託拒否を自分で作り出しています。
これとは別に、UN 38.3 の認証は必須です。国連の試験方法及び判定基準に従った試験を経たものだけが輸送を許されます。書類の要求水準も最近上がりました。IATA は 2026 年 1 月に危険物規則書(DGR)第 65 版を発行してリチウム電池の申告要件を厳格化し、同じタイミングで主要な国際宅配業者数社が申告書式を更新しています。試験報告書と申告書がそれ以前に作られたものなら、見直す価値があります。
出荷の可否を決める4つの数字
ここまでのすべては、書類に載っているか載っていないかの 4 つの数字に集約されます。
- 電池 1 個あたりのワットアワー — すべてのしきい値が書かれている単位
- セル公称電圧 — これがなければ、mAh を他人が換算することはできません
- 1 梱包あたり・1 出荷あたりの電池個数 — 101–160 Wh では数量制限が効いてきます
- 出荷時の充電率 — PI 965 の Sections II、IA、IB では 30 % が上限
この 4 つが揃った仕様書なら、フォワーダーは 30 秒で判断できます。「20000mAh、大容量」とだけ書かれたものは、そもそも判断ができません。そして判断不能な危険物の既定の結末は、受託拒否です。
コンプライアンス書類全体の中での位置づけも押さえておきます。Wh は輸送上の要件であり、到着後に市場へ出すための表示要件とは別物です。EU 向けのその二つ目はGPSR の表示要件が扱う範囲で、片方を満たしたからもう片方も満たせている、ということは一度もありません。
輸出書類だけでなく、商品ページに何を意味するか
ここでの欠落は、たいていエンジニアリングの問題ではありません。Wh の数字がコンプライアンス用の PDF の中に留まり、マーケティングの表面 — 商品画像、外箱、カタログページ — には mAh しか載らない。mAh の方が数字が大きく、見栄えがするからです。
この分断は 2 つのコストを生みます。輸送を組むために Wh が必要な買い手は、いちいちメールで問い合わせることになり、これは引き合いのたびに発生する摩擦です。そして必要だと知らない買い手は、空港かフォワーダーのカウンターで問題に気づき、それはあなたへのクレームに変わります。
実務的な対処は、Wh、セル公称電圧、UN 38.3 の取得状況を、データシートの中だけでなく製品画像と外箱のデザインに、それが指し示す位置に置くことです。白背景で撮影された電池やモバイルバッテリーには、スケールも電気的情報も一切写っていません — 5,000 mAh も 30,000 mAh も同じ絵に見えます。実測値を実際の製品形状にピン留めした引き出し線を、エッジスナップで正確に合わせ、各販売チャネルが指定するサイズで書き出せば、数字は説明対象から離れません。この仕組みが効くのは、ここが誤った数字に規制上の結果が伴うカテゴリーだからです。画像生成モデルは、測定も試験もしていないパックに堂々と「98 Wh」と書き込みます。電池の商品ページ上では、それは認証済みの数値とまったく同じ権威を持って見えます — フォワーダーが UN 38.3 の報告書と突き合わせる、その瞬間までは。測って記録した数字が、それらしい数字に勝ちます。同じ原則は輸出機器の電気的側面にも当てはまり、輸出先市場別のプラグ形状と電圧は最も頻繁に間違ったまま出荷されるフィールドです。
よくある質問
mAh から Wh へはどう換算しますか?
mAh を 1,000 で割り、電池の公称電圧を掛けます。Wh =(mAh ÷ 1000)× V。使うのはセルの公称電圧(リチウムイオンなら通常 3.6–3.7 V)で、USB の出力電圧ではありません。3.7 V の 10,000 mAh パックは 37 Wh です。
100Wh は何 mAh ですか?
セル公称 3.7 V ならおよそ 27,000 mAh(正確には 27,027 mAh)、3.6 V なら 27,778 mAh です。160 Wh の上限は 3.7 V でおよそ 43,200 mAh になります。電圧を添えない換算値は意味を持ちません。しきい値がそもそも Wh で書かれているのは、そのためです。
20000mAh のモバイルバッテリーが 100Wh と表示されることがあるのはなぜですか?
セル基準の 20,000 mAh に、3.6–3.7 V のセル電圧ではなく 5 V の USB 出力電圧を掛けた人がいるからです。正しい値は 72–74 Wh。この取り違えはエネルギーをおよそ 35 % 過大に見せ、本来適合している製品を書類上で承認しきい値まで押し上げてしまいます。
160 Wh を超えるとどうなりますか?
その電池は旅客手荷物では一切輸送できません。完全規制対象のクラス 9 危険物として貨物で動き、それに対応する梱包、表示、書類、運送人の受託要件が付いてきます。101 Wh から 160 Wh の間なら旅客手荷物での輸送は可能ですが、航空会社の事前承認が必要で、数量も制限されます。
リチウム電池を航空輸送するには UN 38.3 の試験が必要ですか?
必要です。航空輸送が認められるのは、国連の試験方法及び判定基準に基づく UN 38.3 に適合したセルおよび電池だけです。試験概要書は出荷書類と一緒に保管し、その書式を 2026 年 1 月発行の IATA DGR 第 65 版と照らして再確認してください。同版はリチウム電池の申告要件を厳格化しています。製品ライン全体の書類を作り直す投資を決める前に、間違えた場合のコスト側を見ておきたいなら、返品コスト計算ツールが、受託拒否や返送 1 件が受注の利益からいくら削るかを金額で示します。
