通し穴(クリアランスホール)寸法表|ISO 273 ボルトの通し穴径(M8 対応)
通し穴寸法表は、ボルトが組めるか不良になるかを決めます。ISO 273 はタイト・標準・ルーズの 3 系列を示し、M8 は 8.4、9.0、10.0 mm。図面に ⌀8 と書けばしまりばめで、組み上がりません。
通し穴(クリアランスホール)寸法表は、ボルト締結部が客先のラインで組めるか、それとも不良品として返ってくるかを決める、たった一枚の表です。ところが図面の多くは同じ間違いをします。ボルトの呼び径をそのまま穴径として指示してしまうのです。M8 ボルトなら ⌀8 の穴——しかし M8 ボルトは 8.0 mm の穴を通りません。
これを解決するのが ISO 273:1979 です。ボルトおよびねじ用の通し穴に関する国際規格で、M1 から M150 までのねじの呼び径を対象とし、しかもボルト 1 本につき 1 つの数値ではなく、3 つ与えます。
通し穴(クリアランスホール)寸法表(ISO 273・メートルねじ)
| ボルト |
呼び径 ⌀ |
タイトはめあい(H12) |
標準はめあい(H13) |
ルーズはめあい(H14) |
| M1.6 |
1.6 |
1.7 |
1.8 |
2.0 |
| M2 |
2.0 |
2.2 |
2.4 |
2.6 |
| M2.5 |
2.5 |
2.7 |
2.9 |
3.1 |
| M3 |
3.0 |
3.2 |
3.4 |
3.6 |
| M4 |
4.0 |
4.3 |
4.5 |
4.8 |
| M5 |
5.0 |
5.3 |
5.5 |
5.8 |
| M6 |
6.0 |
6.4 |
6.6 |
7.0 |
| M8 |
8.0 |
8.4 |
9.0 |
10.0 |
| M10 |
10.0 |
10.5 |
11.0 |
12.0 |
| M12 |
12.0 |
13.0 |
13.5 |
14.5 |
| M16 |
16.0 |
17.0 |
17.5 |
18.5 |
| M20 |
20.0 |
21.0 |
22.0 |
24.0 |
| M24 |
24.0 |
25.0 |
26.0 |
28.0 |
| M30 |
30.0 |
31.0 |
33.0 |
35.0 |
この 3 列は規格にある 3 つの系列——細・中・粗——で、現場ではふつうタイト・標準・ルーズと呼びます。各系列には穴の公差域が組み合わされます。細系列が H12、中系列が H13、粗系列が H14 です。これらの値は勝手に決まったものではありません。ISO 273 の適用範囲には、これらの径が ISO のボルト・ナット製品規格に関連して行われる支圧面積の計算から導かれると明記されています。だから数値は「きれいに 1 ミリずつ増える」規則には従わず、あちこち跳ぶのです。
M8 ボルトでは答えは 8.4 mm、9.0 mm、10.0 mm の 3 つです。図面に ⌀8 と書いてあれば、それはしまりばめを指示したことになり、部品は組み上がりません。
インチねじ用の通し穴寸法表
米国の加工業者に相見積もりを出す場合、同じ 3 はめあいの考え方はインチと番号ドリル(number drill)の形で現れます。ASME B18.2.8 はメートルねじの通し穴を扱い、ISO 273 と整合しています。下のインチ表は、米国の加工担当者が実際によく使う現場慣行の表です。
| ボルト |
呼び径 ⌀ |
タイトはめあい |
標準はめあい |
ルーズはめあい |
| 1/4" |
0.250 |
F — 0.2570 |
17/64" — 0.2656 |
9/32" — 0.2812 |
| 5/16" |
0.3125 |
21/64" — 0.3281 |
11/32" — 0.3438 |
3/8" — 0.3750 |
| 3/8" |
0.375 |
25/64" — 0.3906 |
13/32" — 0.4062 |
7/16" — 0.4375 |
| 7/16" |
0.4375 |
29/64" — 0.4531 |
15/32" — 0.4688 |
1/2" — 0.5000 |
| 1/2" |
0.500 |
33/64" — 0.5156 |
17/32" — 0.5312 |
9/16" — 0.5625 |
| 5/8" |
0.625 |
41/64" — 0.6406 |
21/32" — 0.6562 |
11/16" — 0.6875 |
| 3/4" |
0.750 |
49/64" — 0.7656 |
25/32" — 0.7812 |
13/16" — 0.8125 |
| 1" |
1.000 |
1-1/64" — 1.0156 |
1-1/32" — 1.0312 |
1-1/16" — 1.0625 |
インチ表では、標準はめあいのすきまがおよそ 0.015"〜0.031" に保たれている点に注目してください。メートル表もミリで同じことをしています。どちらも「ボルト径に少し足しただけ」ではありません。両方の体系で見積もりを出すと、メートルねじとインチねじの違いをめぐるのと同じ客先の混乱がここでも起きます。1/4" の指示と M6 の指示は、見積書の上では互換に見えるほど近く、プレートを不良にするには十分なほど離れているのです。
誤解 1:M8 ボルトは 8 mm の穴に合う
最も損害の大きい間違いです。なぜなら、あまりにも筋が通って見えるからです。穴は 8 mm、ボルトは 8 mm、ぴったり合う。
合いません。M8 の「8」はねじの呼び径であり、ボルトはその上に自らの公差を抱えています。8.8 や 10.9 の六角ボルトは、呼び径をわずかに上回ることが許されています。穴をきっちり 8.0 mm で開ければ、意図せず圧入を作ったことになります。ボルトは入らないか、ハンマーで叩き込んでねじをかじるか、あるいは入っても穴を変形させ、締結位置が図面の示す位置でなくなるまでになります。
ISO 273 は、まさにこれを止めるために存在します。M8 ボルトを使う汎用の締結部なら、中系列が 9.0 mm の穴を与えます。図面に書くべきはこの数値であり、8 ではありません。
誤解 2:通し穴のサイズは 1 つだけ
2 番目によくある思い込みは、「通し穴」とはボルト 1 本につき固定の数値が 1 つだというものです。ISO 273 はあえてそれを与えません。すきまは設計上の判断であって、ボルトの属性ではないからです。
3 つの系列は、3 つの異なる問いに答えます。
- タイトはめあい(細系列、H12) —— 締結部を精密に位置決めする必要があり、がたをほとんど許容しない場合。M8:8.4 mm。
- 標準はめあい(中系列、H13) —— 汎用の組立。産業用締結部の圧倒的多数でこれが既定です。M8:9.0 mm。
- ルーズはめあい(粗系列、H14) —— 芯ずれ、現場組立、熱移動を見込む場合、または締める前に部品を滑らせて位置決めする必要がある場合。M8:10.0 mm。
2 つのサプライヤがどちらも見積書に「clearance hole for M8」と書きながら、穴径が 1.6 mm 違う部品を納めることがあります。その差は見積書では見えず、組立ラインでは明らかです。
誤解 3:穴は大きいほど安全
9.0 mm の穴が楽に組めるなら、10 mm の穴はもっと楽に組めるはず——なら安全のために 10 で開ければよいのでは?
そうはなりません。穴はただの空き空間ではないからです。ボルト頭とナットは、穴の周囲にある材料を通してプレートを締め付けます。径を 1 ミリ足すごとに支圧面積が減ります。穴をある程度まで広げると、締結部は締め付けられた継手としての挙動をやめます。荷重でプレートが滑り、ボルトは引張ではなくせん断を受け、穴は時間とともに伸びていきます。
ルーズはめあいは正当な設計上の選択です。長穴、取付時の位置合わせ、熱膨張、現場での手組み立てなどが該当します。既定ではなく、「より安全」でもありません。荷重のかかる構造締結部では、正しい公差を伴う標準はめあいのほうが、公差のないルーズはめあいより安全です。
誤解 4:図面の ⌀9 は完全な指示
⌀9 とだけ書かれた図面は、加工担当者に呼び径を伝えるだけで、それ以外は何も伝えていません。穴は依然として加工されねばならず、どの加工法にも自前のばらつきがあります。
ISO 273 が各系列に公差域を組み合わせているのは、まさにこのためです。H13 では、呼び径 9 mm の穴は 9.000 mm から 9.220 mm まで許されます。H の公差域は正側のみなので、穴が小さく仕上がることはありません。同じく H14 では、呼び径 10 mm の穴の許容差は +0.36 mm で、最大 10.36 mm です。±0.05 mm を守る CNC 加工業者と ±0.2 mm を守るレーザー切断機は、どちらも「⌀9」と読みながら、違う部品を納めます。
したがって完全な指示は ⌀9 ではなく、⌀9 H13 です。欄が 1 つ増えるだけで、加工側はもう意図を推測せずに済みます。
誤解 5:通し穴は工場の細部で、買い手向けの仕様ではない
B2B 輸出では、ここで通し穴は加工の話題から商談の話題に変わります。発注書が出る前に、買い手のエンジニアはインターフェースを確認します。穴径、穴ピッチ、縁距離、板厚、そしてその部品がどのボルトを前提に設計されているか。これらのどれかが図面や仕様画像から欠けていれば、質問が始まります。質問はすべて遅延であり、答えのない質問はすべて、「聞かれる前に答えた」サプライヤを選ぶ理由になるのです。
解決策は長いメールではありません。買い手がすでに見ている画像の上に、実測の穴指示を載せることです。実際の径とその公差クラス、ピッチ、そして前提としているボルトサイズ。これは写真を別のスタイルに作り替える作業とは別物です。生成画像モデルは背景を塗り替え、それらしい寸法を捏造できますが、穴を測定することも公差を示すこともできません。測るべき幾何形状を持たないからです。実測注記——径を実形状に結び付け、公差をテキストとして併記する——こそ、エンジニアが見積もりの根拠にできる版です。
これを正しく行う価値はここにあります。図面は質問の発生源であることをやめ、答えそのものになります。同じ規律を部品の他の部分にも適用したいなら、産業用スペック図は穴径・ピッチ・縁距離が同居する場所であり、通し穴を支配するのと同じ公差の考え方は、相手軸の H7/h6 はめあい公差も支配します。
通し穴のスペック図に載せる項目
この 6 項目を刷り込んでおけば、「穴は何ミリ?」というやり取りは始まる前に消えます。
どのはめあいを選ぶか
| 状況 |
指示する系列 |
M8 の穴 |
| 精密組立。組立速度より位置決めが重要 |
タイトはめあい、H12 |
8.4 mm |
| 汎用の産業用締結部(既定) |
標準はめあい、H13 |
9.0 mm |
| 現場組立、芯ずれの想定、または長穴/調整式の締結部 |
ルーズはめあい、H14 |
10.0 mm |
他に選ぶ強い理由がなければ、標準を選んでください。規格自身の数値がそれを中心に組み立てられており、図面に何も書かれていなければ買い手のエンジニアが前提とするはめあいです。
FAQ
M8 ボルトの通し穴は何ミリですか?
ISO 273:1979 では、M8 ボルトの標準(中系列)通し穴は 9.0 mm です。タイトはめあいが 8.4 mm、ルーズはめあいが 10.0 mm です。穴は 8 mm ではありません。8 mm はボルトの呼び径であり、そこまで開けると、きれいに組めないしまりばめになります。
タイトはめあい・標準はめあい・ルーズはめあいの違いは?
ISO 273 の 3 つの系列で、許容するすきまの大きさで並んでいます。タイトはめあい(細系列、H12)は精密な位置決めのために最小のすきまを与え、標準はめあい(中系列、H13)は汎用の既定、ルーズはめあい(粗系列、H14)は調整と芯ずれを許します。M8 では 3 つの径がそれぞれ 8.4 mm、9.0 mm、10.0 mm です。
通し穴の H13 とは何ですか?
H13 は ISO 273 が中(標準)系列に組み合わせる公差域です。H は下限が呼び径であることを意味し、穴は決して小さくなりません。13 は ISO 286 の公差等級で、上限を定めます。9 mm の H13 の穴は、9.000 mm から 9.220 mm のどこかに実測されます。
通し穴とタップ穴は同じですか?
いいえ。通し穴はボルトが自由に通るようボルトより大きく開けます。タップ穴は下穴径まで開けてからねじを切り、ボルトを噛ませます。径も公差も指示も異なり、一方のつもりをもう一方で指示すると、たいていは部品の不良になります。
製品画像や仕様書で通し穴をどう示せばよいですか?
買い手がすでに見ている画像に、実測の指示を載せてください。径とそのはめあい系列、ピッチとその公差、そしてその穴が前提とするボルトサイズです。要点は、その数値が概算ではなく実測の径であること——エンジニアが見積もりの根拠にできる指示であることです。写真編集ソフトはピクセルを動かせても穴は測れません。値は、注記を実際の形状に結び付け、公差をテキストとして併記することで生まれます。
出典・参考資料