H7/h6 はめあい公差はすきまばめです。中間ばめでもなければ、「ほぼゼロ」でもありません。すきまばめであり、寸法許容差の表を 2 行見れば議論は終わります。はめあいをめぐる引合いのやり取りが混乱する原因は、その半分が記号の文字だけを伝えて数字を省く人にあり、軸が入らないと今度は加工者のせいにされます。ここでは各文字が何を意味するか、数値が実際にいくつなのか、そしてこの記号を買い手が実際に見る書類のどこへ置くべきかを整理します。
H7/h6 はめあい公差を一文で言うと
H7/h6 は ISO 286 に基づく穴基準はめあいで、穴が公差域クラス H7 を、相手の軸が h6 を持ちます。どちらの公差域も呼び寸法ちょうどから始まるため、この組み合わせから生じるのはすきまだけであり、しめしろは決して生じません。
最後の一節が要点です。穴に許される最小のサイズと、軸に許される最大のサイズは同じ数値です。最もきつい場合でもすきまはゼロ——金属どうしが接した状態で、手または軽く叩く程度で組み付きます。圧入にはなりません。
4 つの文字が意味するもの
| 文字 | 何を決めるか | H7/h6 |
|---|---|---|
| 大文字 | 対象の形体が穴(内側)であること、およびその公差域が呼び寸法に対してどこに位置するか | H = 公差域は呼び寸法から始まり、プラス側へ広がる |
| 1 番目の数字 | 穴の公差等級(IT 等級)——公差域の幅 | 7 = IT7 |
| 小文字 | 対象の形体が軸(外側)であること、およびその公差域の位置 | h = 公差域は呼び寸法から始まり、マイナス側へ広がる |
| 2 番目の数字 | 軸の公差等級 | 6 = IT6 |
ここには独立した 2 つの情報が入っています。文字は帯がどこにあるかを、数字はどれだけ広いかを示します。文字を変えればはめあいの性質が変わり、数字を変えれば部品の価格が変わります。
同じ呼び径で「数字を変える」とコストがどう動くかを見てみます。呼び寸法 18 mm を超え 30 mm 以下の区分では、ISO 286-2 の穴の寸法許容差は次のとおりです。
| 穴の公差域クラス | 上の寸法許容差 | 下の寸法許容差 | 公差域の幅 |
|---|---|---|---|
| H7 | +21 µm | 0 | 21 µm |
| H8 | +33 µm | 0 | 33 µm |
| H9 | +52 µm | 0 | 52 µm |
| H11 | +130 µm | 0 | 130 µm |
文字も径も図面も同じです。H11 は H7 より 6 倍ゆるく、保つためのコストはごく一部で済みます。「精密そうに見えた」という理由でブラケットのばか穴に H7 を指定する買い手は、一生使わないリーマ仕上げの穴に金を払っていることになります。
穴基準と軸基準、そしてなぜほぼすべての図面に H7 があるのか
穴基準とは、穴を呼び寸法に固定し、軸を動かしてはめあいをつくる方式です。軸基準はその逆で、軸を固定(h)し、穴を動かします。ISO 286-1 ではどちらも正式な方式です。
実務で穴基準が選ばれるのは、地味ですが動かしがたい理由があるからです。穴は決まった寸法の工具で加工されます。リーマ、ドリル、ブローチ、栓ゲージ——いずれも飛び飛びの寸法でしか存在しません。一方、軸は同じ工具で好きな径に旋削・研削できます。つまり、変えにくい側を標準化するほうが安く済みます。だからこそ、四大陸のカタログのどこを見ても H7/g6、H7/h6、H7/k6、H7/p6 が並び、軸基準の記号は引抜き材や市販の標準軸が固定側になる場面に集中します。
供給側として、買い手の図面が軸基準であれば、黙って穴基準に読み替えないでください。見積回答にその旨を明記します。
すきま・中間・しまり:実数で見る 3 つの結果
呼び径 25 mm(「18 mm を超え 30 mm 以下」の区分)を例にします。穴 H7 = 25.000~25.021 mm です。ここで軸を入れ替えていきます。
| はめあい | 軸の許容限界サイズ(mm) | 結果の範囲 | 種類 |
|---|---|---|---|
| H7/f7 | 24.959 – 24.980 | すきま 0.020~0.062 mm | すきまばめ——回転用 |
| H7/g6 | 24.980 – 24.993 | すきま 0.007~0.041 mm | すきまばめ——滑り用 |
| H7/h6 | 24.987 – 25.000 | すきま 0~0.034 mm | すきまばめ——位置決め用 |
| H7/k6 | 25.002 – 25.015 | しめしろ 0.015 mm ~ すきま 0.019 mm | 中間ばめ |
| H7/n6 | 25.015 – 25.028 | しめしろ 0.028 mm ~ すきま 0.006 mm | 中間ばめ(しまり寄り) |
| H7/p6 | 25.022 – 25.035 | しめしろ 0.001~0.035 mm | しまりばめ——軽圧入 |
h6 の行をもう一度読んでください。最悪でもすきまは 34 µm——髪の毛の太さの約半分です。最良の場合はゼロです。公差内の部品どうしを組み合わせて、しめしろが生じることはありません。H7/h6 を中間ばめと呼ぶ人は、k6 か n6 の話をしています。
じっくり見る価値があるのは中間ばめの 2 行です。H7/k6 はどちらにも転びますが、それこそがこのはめあいの目的です。正確に位置決めしつつ、取り外しもできること。組立工程が常に圧入になる前提で組まれていると、k6 の下限側で仕上がった 1 ロットは買い手の手元で抜け落ちます。
実際に金を失う 4 つの誤解
「H7 は公差の値である」
H7 は公差域クラスであって、値ではありません。呼び寸法が決まって初めて数値になります。18~30 mm では H7 は 21 µm ですが、寸法区分が変わればいずれも別の数値です。仕様書に「H7 公差 ±0.02」と書くのは、1 行に矛盾する 2 つの記述を並べることです。どちらか一方——記号か、明示した許容限界か——を選び、両方書くのであれば必ず一致させてください。
「h6 と H6 は同じもの」
大文字か小文字かには意味があります。大文字 = 穴、小文字 = 軸です。軸の寸法に付いた H6 は厳しい指定ではなく単なる誤記であり、それを読んだ加工者は問い合わせるか、推測するかのどちらかになります。中国語から英語へ訳された見積書や、打ち直された仕様表では、これは最も多い破損のひとつで、小数点の脱落と並びます。書類を出す前に、すべてのはめあい記号の大文字・小文字を確認してください。
「はめあい記号ですべて決まる」
決まりません。はめあい記号が規制するのはサイズだけです。軸はどの測定点でも 24.995 mm ぴったりでありながら、曲がり・テーパ・多角形状によって穴の中で焼き付くことがあります。形状と姿勢は幾何公差で指定するものであり、その基本ルールは ISO 8015 が定めています。真円度や円筒度が組立に効くのであれば、別途明記してください。はめあい記号が代わりをしてくれることはありません。
「残りは普通公差でカバーされる」
普通公差がカバーするのは、個別に公差指示をしなかった寸法だけであり、しかも引用した普通公差規格が定めるやり方でしかカバーしません。これははめあい記号とは別の判断です。しかも、従来 2 部構成だった ISO 2768 の一部が廃止されたことで、普通公差まわりの前提は動いています。表題欄が、思っている形ではもう存在しない規格を引用したままであれば、次の図面一式を出す前に寸法公差の累積を読んでおいてください。
実際に何を指定するか:そのまま使える選定表
| 必要な機能 | 指定 | 組付け方法 | 代表的な用途 |
|---|---|---|---|
| 自由に回る、油膜の余地がある | H7/f7 | 自由に滑り込む | ブシュ、低速のジャーナル |
| 滑って回る、がたは最小 | H7/g6 | 手で滑り込ませる | インロー、栓ゲージ、滑りピン |
| 位置決め、がたなし、取り外し可 | H7/h6 | 手または木ハンマで軽く | 位置決めピン、スペーサ、治具ブシュ |
| 強く位置決め、プーラで取り外し | H7/k6 | 軽圧入または打ち込み | キー付き軸の歯車 |
| 位置決め、事実上は永久 | H7/p6 | 圧入または焼きばめ | 軸受の外輪、ブシュ |
覚えておく価値のある原則がひとつあります。機能を満たす範囲で、最もゆるいはめあいを選ぶこと。 等級をひとつ厳しくするたびに検査工数と不良率は跳ね上がりますが、買い手が求めてもいない精度に礼を言われることは、まずありません。
輸出用の仕様書のどこにはめあい記号を置くか
ここが、加工とはまったく関係のないところで受注を落とす場面です。はめあいは正しく、図面も正しいのに、海外の買い手からの質問は 3 往復します——はめあい記号が 4 ページ目の PDF の表にあり、買い手は WhatsApp で部品の写真を見ているからです。
数字は、視線がすでに向いている場所へ置いてください。製品写真の上で、相手部品と合う径から引出線を出して「Ø25 H7」と書けば、購買技術者には 1 秒で伝わります。公差表を 1 分眺めるより多くのことが伝わります。ねじの表記、穴深さ、合わせ面の平面度でも同じです。継手や軸を輸出しているのであれば、NPT と BSP のねじ識別を支配するのと同じ理屈がここでも効きます。仕様は、判断されるその瞬間に見えていなければならず、請求されてから出すものではありません。
現実的な制約として、こうした画像をつくる人の多くは CAD のライセンスも製図者も持っていません。この用途に向く道具は、写真編集ソフトでも AI 画像生成でもありません。AI 生成は、測ったこともない部品の上に自信満々の「Ø25」を平気で描きます。必要なのは、写真の中の形体の実測エッジに吸着し、寸法をテキストボックスではなく形状に結び付け、引合いプラットフォームやカタログのテンプレートが求めるサイズで書き出せる注記です。測った数字か、それらしく見えるだけの数字か——この違いが、仕様図と飾りとの差のすべてです。実際の部品でどう仕上がるかは、工業用スペック図の形式を参照してください。
単一のはめあいではなく範囲を示す場合は、製品の寸法公差の一般ルールが、買い手に信用される ± 値の見せ方を説明しています。
はめあい記号を含む図面を出す前のチェックリスト
- すべてのはめあい記号の隣に呼び寸法がある(「H7 の穴」ではなく Ø25 H7)
- 打ち直しや翻訳のあとに、すべての記号の大文字・小文字を確認した
- 穴基準か軸基準かを、注記に一度だけ明示した
- はめあい記号と矛盾する ± 値が同じ寸法に併記されていない
- 等級に根拠がある:機能上の必要がない限り IT7 より厳しくしない
- 効いてくる箇所では、形状と姿勢を別途指示した
- 表題欄の普通公差規格が現行であり、正しく引用されている
- 買い手が本当に気にする 2~3 のはめあいが、PDF の中だけでなく製品画像の上で見えている
よくある質問
H7/h6 はすきまばめですか、中間ばめですか。
すきまばめです。呼び寸法 25 mm では、H7 の穴が 25.000~25.021 mm、h6 の軸が 24.987~25.000 mm となり、結果は 0~0.034 mm のすきまに収まります。公差内の部品どうしでは、しめしろは算術的に成立しません。中間ばめは k6 から始まります。
H7 の数字は何を意味しますか。
ISO の公差等級 IT7 のことで、公差域の幅を決めます。固定値ではなく、呼び寸法の区分ごとに異なるマイクロメートル値になります。18 mm を超え 30 mm 以下では、穴の IT7 は 21 µm です。
H7/g6 は H7/h6 と比べてどれだけすきまが出ますか。
呼び寸法 25 mm では、H7/g6 が 0.007~0.041 mm、H7/h6 が 0~0.034 mm です。実務上の違いは最小すきまが保証されるかどうかで、g6 は必ずすきまが残り、h6 は残らないことがあります。確実に滑らせたい、あるいは潤滑油膜を保持したい部品には g6 を指定してください。
なぜ多くの図面は軸基準ではなく穴基準を使うのですか。
穴は決まった寸法の工具——リーマ、ブローチ、栓ゲージ——でつくられるのに対し、軸は同じ工具で任意の径に旋削・研削できるからです。穴を標準化して軸を変えるほうが、製作も検査も安く済みます。
はめあい記号は真円度や真直度を規制しますか。
しません。はめあい記号が規制するのはサイズだけです。軸はどの直径でも h6 に入っていながら、真円度が外れていて組み付かないことがあります。幾何特性は別途指定する必要があり、その指定をどう解釈するかの基本ルールは ISO 8015 が定めています。
